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更新日:2024/10/01
【初級編】電力系統用蓄電池とは?概要と今後についてわかりやすく解説
日本では2011年の原発事故問題以降、再生可能エネルギーへの注目が集まりました。
それ以降現在に至るまで太陽光発電を中心に日本全国で普及が進んでいきました。
ただ、再生可能エネルギーには天候に左右されたり、時期や季節によっても発電量が変わってくるといった課題もあります。
そういった再生可能エネルギーの不安定性という問題を解決する装置として期待されているものが蓄電池です。
今回は、さまざまな場面で利用される蓄電池の中でも、電力系統で利用される蓄電池についてご紹介します。
電力系統用蓄電池とは?
その中で、電力系統(発電所から送配電まで、電力に関するシステム全体のこと)に繋いで利用されるのが、「電力系統用蓄電池」です。
この大規模な蓄電池を、再エネ発電所や基幹系統につなげば、電力が余った時には蓄電し、電力が不足した時には放電することで、系統電力の安定化を図ることができます。
様々な実証実験
経済産業省では2013年より「大型蓄電システムによる緊急実証実験」、2015年の「大容量蓄電システム需給バランス改善実証事業」、2016年の「大型蓄電システムによる需給バランス改善実証事業」などを通じて、蓄電池の実証実験を支援しています。
その中でも今回は「NAS電池」を使用したケースを見てみましょう。
NAS電池とは?
NAS電池は、マイナス極にナトリウム(Na)、プラス極に硫黄(S)、両極を隔てる電解質にファインセラミックスを使用し、硫黄とナトリウムイオンに化学反応を起こさせて充放電を繰り返す蓄電池です。
希少金属を使わない純国産技術であり、フル充電を行っても容量の劣化が少ないという特徴があります。
また、使用しなくても勝手に溜めた電気が減っていく自己放電をしないことも大きな特徴の一つとなっております。
2015年には日本ガイシが製造するNAS電池が福岡県豊前市に豊前蓄電池変電所へ設置しました。
太陽光発電では発電のコントロールが難しく、電力が余ってしまうときには出力制御を行う等調整をしなければいけませんでした。
そこで大容量蓄電池を利用して余った電気を貯蓄することでより効率のいい発電を行っていくことを目指しております。
実際に実験結果として1日当たり30万kwh相当の出力制御を回避するほどの充放電運転を計画通りに成功しました
このように、電力系統用の蓄電池を使うことで、電力の需給バランスを改善したり、再エネの導入可能な量を増やしたりすることが可能となります。
電力系統用蓄電池の今後について
再エネ発電の出力変動を事前に予測する取り組みや、電力系統側によるシステム制御などの取り組みとあわせて、今後も、電力系統用蓄電池の性能向上や、運用の最適化を促していきます。
また、電力系統用蓄電池そのものの低コスト化を目指すことも大切です。
こうした取り組みも進めることで、再エネ事業者が事業をおこないやすい環境を整備することにつなげていければいいですね。