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更新日:2024/07/23
自動車整備工場が省エネに取り組むには?おすすめの方法や成功事例を解説!
世界的に省エネや再生可能エネルギーの導入などが取り沙汰されている中、日本でもこれらの取り組みに関する法整備をおこない、さまざまな企業に対してその実現のための活動を要請しています。
自動車整備工場という分野においてもこの取り組みは重要視されていますが、具体的な活動をできていない業者も少なくありません。
そして、自動車整備工場は売り込みの営業が特に多く、もううんざりしている方もいるかもしれません。
本記事では、自動車整備工場における省エネ実現のための取り組みを売り込みなしで解説します。
自動車整備工場における省エネの重要性
生活における自動車への依存度は地域性もありますが、とくに公共交通機関が十分ではない地域では自動車の利用は生命線となります。
そんな自動車を整備して安全に運転できるようにするためには、自動車整備業者の存在が欠かせません。
そんな自動車整備工場において、省エネが重要視されている理由は何なのでしょうか。
カーボンニュートラルを目指した2030年目標
経済産業省の資料によりますと、2050年のカーボンニュートラル目標に向けて、まずは2030年時点でのエネルギー消費量を推定してエネルギー需要への対策や省エネ対策を検討する必要があると述べられています。
そこで政府は、エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(通称:省エネ法)を制定し、一定規模以上のエネルギー消費事業者に対してエネルギーの使用状況等について定期的に報告させ、省エネや非化石転換等に関する取り組みの見直し・計画の策定等を指示しているのです。
日本は、世界的に見て発電における化石燃料への依存度がトップクラスで高いわけではありませんが、クリーンエネルギー先進国と比較するとかなり高い水準となっています。
地球温暖化の原因となるCO2排出量を減らし、持続可能な社会を手に入れるためには、多くのエネルギーを消費している事業者が、積極的に自社の省エネ化を目指す必要があるのです。
自動車整備工場が省エネ化を目指す意味
省エネ法に則って行動するため、という意味合いも当然ながらあるのでしょうが、自動車整備工場が省エネ化を目指すことには他にも大きな意味があるのです。
コスト削減による競争力の強化
1つ目の意味は「コスト削減」にあります。
省エネとは、要するに消費するエネルギー量を減らすことで、環境に配慮するという意味があります。
しかし「消費エネルギー量を減らす」ということは、要するに「エネルギーにかかるコストを削減する」という意味合いもあるのです。
コストとは要するに「原価」ですから、原価が下がれば整備費用も抑えられますので、価格設定を下げることで競争力を増すことができます。
さらに、省エネによりコスト削減に成功すれば、それを従業員に支払う給料に反映させることもできます。
昨今、自動車整備業界は人手不足が深刻化しており、従業員を効果的に募集するためにも給料にかけられるコストを確保することは重要なのです。
市民が自動車を使い続ける限り需要がなくなることがない自動車整備業界は、競争力を確保するためにも省エネを目指してコストカットをし、それを販売価格や給料へと反映させることが重要なのです。
環境配慮による社会貢献
2つ目の意味は「環境配慮による社会貢献」です。
持続可能な社会を築くためには、企業は社会的責任(CSR)を果たす必要があります。
大規模な事業を行う企業は、一般家庭と比較して多くのエネルギーを消費することになりますので、省エネに取り組むべき立場として責任が問われるのです。
事業者における省エネ活動はイメージ向上や社会への貢献となり、それは顧客の獲得にもつながるので2つの意味で大きなメリットがあるといえるでしょう。
自動車整備工場におけるエネルギー消費の内訳
自動車整備業においては、さまざまな理由から多くのエネルギーを消費しています。
そこで、具体的にどういった理由で多くのエネルギーを消費しているのかについて解説します。
自動車整備工場におけるエネルギー消費割合として大きいのは「整備機械の運転のため」ですが、それ以外にも工場内の空調や照明、洗車用の水を大量に消費するなど、省エネのためにアプローチできる部分は少なくありません。
具体的には、以下のような理由でエネルギーを消費しています。
整備機械の運転
自動車整備には大型機械を複数使用せざるを得ず、その機械の運転に相応のエネルギー消費とCO2発生が考えられます。
とくに大規模な工場の場合、運転する機会の数が多いことでさらに多くのエネルギーを消費することになるのです。
冷暖房システム
整備工場内で働く従業員の体調管理のためには、冷暖房などの空調システムの導入・稼働が欠かせません。
ただし、古い空調設備を使い続けている場合だと運転効率が悪く、同じ温度設定でも多くのエネルギーを消費することになるでしょう。
照明
工場内での安全性と精密な作業の実現のためには、適度な明るさを保つための照明機器の使用が欠かせません。
照明も機器によってエネルギー効率が変わりますので、古くなった照明を使い続けると多くのエネルギーを消費することになります。
洗車用の水の消費
自動車整備では洗車を行いますが、その際には多くの水を消費することになります。
一度に多くの自動車を整備する大規模な工場だと、その分だけ一事業所だけで多くの水を消費することになるのです。
省エネを目指すにあたっては、これらの点に注目し、どうすれば省エネを目指したアプローチを実現できるかを検討することが重要です。
自動車整備工場で取り組むことのできる省エネ
今後も自動車整備のニーズが続く以上、その事業継続においてエネルギー消費量を抑えるためには適切な省エネ対策を講じる必要があります。
事業者における省エネ対策の方向性はその業態により異なりますが、自動車整備業者の場合であれば以下のような取り組みが可能です。
整備機械の効率化
自動車整備工場で多くのエネルギーを消費している整備機械へのアプローチは、省エネ対策として大きな意味を持つことになります。
整備機械に対するアプローチは大きく分けて2種類あります。
整備機械の高効率型への買い替え
整備機械を買い替えるにあたって、エネルギー効率の良い機械に買い替えることでエネルギー消費量を抑えることができます。
整備機械の効率的な使用
従業員が整備機械を効率よく使用することで、エネルギー消費量を抑えることができます。
前者の場合は買い替えコストがかかりますので、老朽化や故障などの出来事がなければ簡単には実行できません。
一方で後者の場合は従業員に指導することですぐにでも実行できるため、より現実的なアプローチとなるでしょう。
国土交通省が公表しているヒアリング資料によると、ある自動車整備業者はエアコンプレッサーの温度を上げないように密封状態を避けて温度を定温に保つことで効率を上げたり、昼休み中は電源を切ることでエネルギー消費量を抑えています。
※参考:自動車整備事業場ヒアリング調査結果
空調設備の効率化
整備機械ほど多くのエネルギーを消費することはないでしょうが、作業中使い続けることになるであろう冷暖房などの空調システムの省エネ対策も、自動車整備工場の省エネの取り組みとして重要です。
高効率の機器導入
古い設備は、最新の設備よりも多くのエネルギーを消費することになります。
最新の冷暖房機器に更新することで冷暖房コストを抑えることが可能です。
システムの統合
冷暖房システムを一元管理することにより、無駄な運転や重複した設備を排除して空調設備の効率的運用が可能になります。
自動制御システムの導入
温度や湿度などを感知するセンサーを活用して自動制御を行い、必要以上のエネルギー消費を防いで適切な室温を維持できます。
先ほどの資料の別の自動車整備業者の取り組みによると、整備工場を外気と遮断する密閉型にしてスポット冷暖房としたことにより、空調費用の大幅な削減に成功しています。
また、効率的な冷暖房の運用においては、遮熱効果のある塗料で屋根塗装を行うというアプローチもあります。
遮熱効果により工場内の温度上昇を抑えることにより、少ないエネルギーで工場内の温度を快適に保つことが可能になるのです。
照明機器の改善
工場内の安全性・視認性と精密作業の実現のためには、照明の使用が欠かせません。
この照明についても、ちょっとしたアプローチによりエネルギー消費量を抑えることが十分に可能です。
消費電力の削減
たとえば「LED照明」は従来の蛍光灯に比べて消費電力が約1/3~1/6程度であり、とくに大規模な工場の場合だと数多くの照明を使用しているためLED照明への切り替えによる節電効果は大きくなります。
明るさの向上
照明の種類を変えることにより、消費電力を抑えつつ工場内の明るさを従来よりも高めることも可能です。
視認性と安全性が高まるため、事故や作業ミスの発生リスクを抑えることにも貢献します。
たとえば、エネトクでの導入事例として店舗内の明るさと消費電力を改善するためにLED照明へ交換することによって約40%アップのコスト削減を実現しています。
太陽光発電の導入
省エネへの取り組みについては、「消費エネルギー量を減らす」だけでなく「自分たちでクリーンエネルギーを作り出す」というアプローチも重要です。
その代表的なものとして挙げられるのが、太陽光発電になります。
環境への負荷軽減
太陽光発電は化石燃料を使わずに電力を作るため、温室効果ガスの排出量を削減できます。
経済的メリット
自家消費できる電力を増やすことで、電気代の削減が可能です。また、余った電力を売電することで収益を上げることもできます。
企業イメージの向上
再生可能エネルギーの導入は、企業の環境への取り組みや社会的責任を示す良い手段となります。
自動車整備工場との相性
今後は「電気自動車」の普及が注目されており、電気自動車に充電するための電気を自社の太陽光発電システムで作り出すことで省エネ対策になります。
株式会社井出自動車整備工場では、平成27年4月より福島県いわき市にて太陽光による自然エネルギーによる発電設備を総発電量594Kwhで稼働しています。
※参考:井出自動車整備工場様の事例
洗車用の水の消費削減
自動車整備では洗車に大量の水を消費しますが、昨今は気候変動の影響もあってか国内でも水不足に悩む地域があり、自動車整備向上における節水への取り組みも重要です。
実際「環境に優しい自動車整備事業場等審査基準」においても、洗車時の節水の実行が評価基準に含まれています。
自動車整備工場の省エネ事例
自動車整備工場において省エネに成功した事例をいくつか紹介します。
自動車整備工場Y社
湯井電機株式会社が公表している資料によると、この自動車整備工場では250Wの水銀灯を使用していたことで年間76万円の電気料金が発生し、少しでもコストを削減しようと水銀灯のLED化を考えていました。
これに対して60WのLEDを導入したことで年間の使用電気料金が17万円まで削減され、約78%の省エネにつながったのです。
また、照度も251lxから261lxと明るくなったことにより、作業環境の改善にもつながっています。
※参考:自動車整備工場Y社様の事例
自動車整備工場A社の事例
一般財団法人省エネルギーセンターが公表している資料によると、全般的な省エネ診断をした結果として外気導入量の低減や空調設定温度の緩和、エア配管の漏れ対策やコンプレッサの吐出圧低減など9種類の更新等の改善が提案されました。
これが実施されているのかどうかは記載されていませんが、すべての提案を実施することで消費エネルギー量が約4割も抑えられ、年間で約88万円のコスト削減につながるとされています。
※参考:省エネ診断事例
エステックカーサービス株式会社の事例
この事例では、工場内の冷暖房効率の改善のために、出入り口部分にビニールカーテンを設置しています。
「高級車の整備を多く請け負っている」という事情からビニールカーテンはブラックのフチ加工を施して間仕切りポールもブラックタイプを使用、ビニールカーテンが風で煽られないようにポールに落としピンを付けて地面に固定できるようにするなどの工夫がなされています。
※参考:ビニールカーテンの事例
まとめ
今後は電気自動車の整備という新しいステージへの以降が注目されている自動車整備工場。
整備機械の運転などで多くのエネルギーを消費する関係上、省エネに対する取り組みが大きく期待されています。
必要に応じて省エネを実施していきましょう。
エネトクでは、自動車整備工場の省エネ支援実績が多数あるので、まずはお気軽にご相談ください。