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更新日:2024/01/24
【これだけ実践】印刷業における省エネの重要性と効果的な取組み方法
近年、企業の社会的責任を果たすために、節電・節水などの省エネ活動が重要視されています。
特に印刷業は、多くの電力を消費する産業の一つであり、省エネ活動の重要性がより高いです。
本記事では、印刷業における節電と省エネの重要性について説明し、効果的な省エネ方法について探求します。
印刷業における省エネが必要な背景
多くのエネルギーや資源を使用する印刷業は、さまざまな業種の中でも省エネ活動の重要性が高いとされています。
では、具体的にどういった背景で、どういった理由で省エネ活動が必要とされているのでしょうか。
環境への負荷とエネルギー消費量の増加
印刷業は、大量の紙やインクを使用することにより、森林の伐採や石油資源の消費につながり、環境に負荷をかけています。
また、大型の印刷機や冷暖房設備などの使用により、多くの電力を消費している業種なのです。
これらの要因により、CO2排出や資源の枯渇など、環境問題が深刻化しています。
政府の省エネ政策と規制
多くの国で、気候変動への対策として省エネ政策が推進されています。
印刷業もエネルギー消費の大幅削減が求められており、省エネの取り組みは法律や規制で強制される場合もあるのです。
これに対応しない企業は、対応している企業と比較して競争力が低下する可能性があります。
企業の社会的責任とCSR活動
持続可能な社会を築くためには、企業は社会的責任(CSR)を果たす必要があります。
省エネ活動は企業のイメージ向上や社会への貢献となるだけでなく、省エネによるコスト削減は企業の経営にもプラスに働くでしょう。
印刷業における電気代の内訳、割合
印刷業においては、さまざまな理由から多くのエネルギーを消費します。
具体的にどういった理由で多くのエネルギーを、どれくらいの割合で消費しているのかについて解説します。
印刷業のエネルギー消費の主な要因
印刷業におけるエネルギー消費の主な要因は、印刷機械の運転や冷暖房システム、照明などが挙げられます。
これらの要因により、印刷業の電気代は企業の費用においてかなりの割合を占めています。
- 冷暖房システム:大型の印刷機械は高速で動作し、大量の紙を印刷するために多くの電力を必要とします。特に、高品質の印刷を行う場合は、より多くの電力が消費されます。
- 印刷機械の運転:印刷工場やオフィスでは、快適な作業環境を保つために冷暖房設備が必要です。大規模な施設では、広い空間を冷暖房するために多くのエネルギーが必要となります。
- 照明:印刷工場やオフィスの照明は、作業効率と安全性を確保するために重要です。しかし、従来の蛍光灯や白熱灯は照明としての効率が低く、多くの電力を消費します。
電気代の割合とコストへの影響
印刷業において、電気代は重要なコスト要因となります。
特に、大規模な印刷工場では莫大な電気代がかかることがあります。
電気代は、原料費や人件費と並ぶ重要な経費であり、収益に大きく影響を及ぼします。
エネルギー効率の低い設備や機械を使用している場合だと、電気代の割合はさらに高くなるでしょう。
省エネの取り組みにより電気代を削減することは、経営における費用負担を軽減し、収益性の向上に寄与します。
また、省エネ活動は企業のCSR活動にも繋がり、社会的評価の向上にも寄与するでしょう。
印刷業で効果的な省エネ方法
このように、印刷業では多くのエネルギーを消費するという都合上、そのエネルギー消費量を抑えるための省エネ活動が重要視されているのです。
では、印刷業が省エネを実現するためには、具体的にどのような取り組みが必要になるのでしょうか。
太陽光発電の導入
印刷業における電力消費を抑える具体的な方法としては「太陽光発電」の導入が考えられます。
太陽光発電は、太陽光を利用して電力を生成する再生可能エネルギーの一つです。
二酸化炭素などの物質を排出するような発電による電力消費量を抑えることができるため、環境保護につながり、社会貢献にも寄与する活動となります。
すでに多くの企業がこのクリーンエネルギーに注目しており、さまざまな効果を実現しているのです。
印刷業においても、太陽光発電の導入は多くのメリットをもたらします。
メリット
- 環境への負荷軽減:太陽光発電は、化石燃料を使わずに電力を発生させるため、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を削減できます。企業が積極的に太陽光発電に取り組むことにより火力発電等の環境に問題を及ぼす発電に対する依存度を低下させ、地球温暖化などの環境問題の解決に近づけることができるでしょう。
- 経済的メリット:自家消費できる電力を増やすことで、電気代の削減が可能です。また、余った電力を売電することで収益を上げることもできます。印刷業は多くの電気を消費するため電気代による収益の圧迫という問題を抱えていましたが、太陽光発電への依存度を高めることにより収益性を向上させることができるでしょう。
- 企業イメージの向上:再生可能エネルギーの導入は、企業の環境への取り組みや社会的責任を示す良い手段となります。
印刷業における太陽光発電の適用例として、印刷工場の屋根に太陽光パネルを設置するケースがあります。
使っていなかった屋根のスペースを有効活用することで、自家消費できる電力を増やすことが可能です。
特に、大規模な印刷工場では広大な敷地を活用して大容量の太陽光発電システムを構築することで、より多くの電力を自給自足できるでしょう。
もちろん、屋根以外の敷地に太陽光パネルを設置することも可能なので、多くの敷地を活用できる企業ほど太陽光発電の恩恵を得られるのです。
LED照明への切り替え
高品質な業務体制の構築のために、印刷業では「照明」の質も問われますが、照明の使用もまた電気を使用します。
そこで、業務の質と電力消費の両方に対して効果を発揮することができる「LED照明」の活用が重要です。
従来の蛍光灯や白熱灯に比べて、LED照明は消費電力が低く寿命も長いため、省エネに効果的です。
すでに多くの企業が、従来の照明をLEDに交換しており、さまざまな効果を実現しています。
印刷業においても、LED照明への切り替えは電気代の削減やメンテナンスコストの削減につながるでしょう。
メリット
- 消費電力の削減:LED照明は、従来の蛍光灯に比べて消費電力が約1/3~1/6程度です。大規模な印刷工場の場合だと数多くの照明を使用しているため、LED照明への切り替えによる節電効果は大きくなります。
- メンテナンスコストの削減:LED照明は寿命が長いため、交換の頻度が少なくなります。従来の蛍光灯や白熱灯では頻繁に交換が必要でしたが、LED照明に切り替えることでメンテナンスコストが低減するのです。
- 熱の発生が少ない:LED照明は発熱が少ないため、使用環境の室温をあまり上げません。そのため、気温の高い夏場における冷房の温度をあまり低くしなくても快適な室温を実現することができ、冷房の負荷を軽減することで冷暖房コストの削減にも貢献します。
機械の省エネ改修
印刷業においては、その業務遂行のためにさまざまな機械・設備を使用します。当然ながらこの機械も電気を使用しますので、そのエネルギー効率も重要です。
印刷業における省エネ活動の実現のためには「機械の省エネ改修」も大きなポイントになります。
印刷機械のエネルギー効率化の方法と事例
普段から稼働させることになる機械の消費電力量を抑えることで電気代の負担を軽減し、企業としての社会貢献としての側面も併せ持つことにより多くのメリットが生まれるのです。
省エネ改修の方法
- エネルギー効率の高い機械への更新:最新の印刷機械は省エネ型が増えており、エネルギー効率が向上しています。旧式の機械を新しい省エネ型に更新することにより、消費電力の大幅な削減が可能です。
- エネルギーの再利用:印刷工程で発生する余熱や排気ガスを再利用するシステムの導入により、エネルギーの無駄を省くことができます。これにより、費用負担を軽減するだけでなく、環境への負荷を低減することも可能です。
- 自動制御の導入:自動制御システムを導入することで、必要以上にエネルギーを消費することを防ぎ、効率的な運転が可能となります。機械制御のための人件費の削減にもつながり、費用の削減に大きな効果をもたらすでしょう。
印刷機械の省エネ改修事例として、埼玉県が公表している資料が参考になります。
ある印刷会社では脱臭装置を自動で再起動させることにより予熱忘れが防止され、最適なタイミングで生産を開始することができるようになりました。
システム導入前後の印刷機の電力消費量を比較した結果、約 5 万円/月のコスト削減を実現していることがわかっています。
冷暖房システムの最適化
印刷業においても、快適な作業環境を実現するための冷暖房の使用は欠かせませんが、これも多くの電気を使用します。
省エネ活動の実現のためには、冷暖房システムを最適化し、消費エネルギー量のコントロールが重要です。
エネルギー効率の高い冷暖房システムの選定と運用方法
エネルギー効率の高い冷暖房システムの導入や運用最適化により、省エネ効果を最大化することができるでしょう。
選定と運用方法
- 高効率の機器導入:冷却機やボイラーなどの冷暖房機器は、エネルギー効率が異なります。省エネ性能の高い機器を選定することで、消費電力を削減することが可能です。
- システムの統合:冷暖房システムを一元管理することで無駄な運転や重複した設備を排除し、空調設備の効率的な運用が可能になります。手動での空調管理と比較して高度な効率化が実現できるでしょう。
- 自動制御システムの導入:温度や湿度などのセンサーを活用して自動制御を行うことで、必要以上のエネルギー消費を防ぎ、適切な環境を維持できます。無駄な電力消費を防げるだけでなく、快適な作業空間を自動的に実現可能です。
- 静岡県のある印刷会社では、古くなった空調を補助金を活用して更新しています。
運転効率の悪い空調は室温の調整に余計なエネルギーを使用するため、新しい空調設備に取り換えることで少ないエネルギーでも快適な作業環境を実現できるでしょう。
参考:静岡県の印刷会社_事例
省エネに成功している事例
最後に、省エネに成功した印刷業を2つ紹介します。
共立印刷株式会社
共立印刷株式会社では、次工程にスムーズにつながる生産ラインの設計やクリーンエネルギー・省エネルギー設備の開発などに取り組んでいます。
2023年3月期においてISO14001を取得した2004年3月期比で千通数当たりの電気にかかるCO2排出量を44.9%、ガスにかかるCO2排出量を49%削減し、合計で46.3%削減することに成功しています。
参考:共立印刷株式会社様
文唱堂印刷株式会社
文唱堂印刷株式会社では、国や都の補助金を活用して電気設備の2/3を高効率型へ変更しました。
環境への取り組みが評価されたことにより、第15回印刷産業環境優良工場表彰の「経済産業大臣賞」を受賞しています。
参考:文唱堂印刷株式会社様
まとめ
今回は、印刷業における節電・省エネについて解説しました。
印刷業における節電と省エネは、企業の社会的責任を果たし、経済的なメリットをもたらす重要な取り組みです。
太陽光発電やLED照明の導入、機械の改修や冷暖房システムの最適化など、効果的な省エネ方法を取り入れることで企業は持続可能な経営を実現できるでしょう。
さまざまな省エネ技術を取り入れることにより、印刷業は環境に配慮しながらも経済的な利益を追求することが可能となります。