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更新日:2024/11/21
【結局これ!】機械関連の製造業にイチオシの省エネ方法を紹介
「省エネに取り組みたいけど、何から始めればよいかわからない」
「節電による使用電力の抑制をしたいが、効果的な方法はあるのか」
「なぜ省エネが推奨されているのか知りたい」など、悩みのある方はいませんか?
機械関連の製造業は、工場の稼働している機械やシステムが多くの電力を消費しています。
そこで、製造工程の機械システムの効率化や太陽光発電の導入、それ以外の節電方法などを駆使して使用電力を減らします。
その結果、CO2削減やコストの低減など、さまざまな企業としての利益を受け取れます。
本記事では、機械関連の製造業が消費している電力の削減や効率化といった省エネの必要性を明らかにし、電気料金の内訳や省エネの方法、事例などについて解説します。
Contents
機械関連の製造業で省エネが必要な理由や背景
機械関連の製造業が運営する工場に省エネが求められる理由や背景は、以下の4つです。
- 省エネが企業利益につながる
- 「省エネ法」で国が規制している
- 社会貢献(SDGs、地球温暖化などの対策)
- 企業知名度、ブランド価値の向上
上記が、省エネとどのように関連し、企業によって具体的にどう実施されているのかを紹介します。
省エネが企業利益につながる
機械関連の製造業が省エネに取り組む理由に、企業利益につながることが挙げられます。
省エネとは、電気や熱のエネルギー生産の無駄を減らして、効率を上げることです。
つまり、省エネへの取り組みは、電力の効率を上げて無駄を省くため、生産性の向上が見込まれます。
生産性が上がるということは、無駄なコストも削減できます。
工場の大きなコストを占めるのは、電気代やガス代、水道代などの光熱費です。
特に大きな負担となりやすいのは電気代です。
節電しやすい環境や設備、従業員の意識などを準備することで、電気を使いすぎない製造が可能になります。
具体的には、電力削減や工場内のエネルギー再利用など、以下のような省エネの例です。
- 蛍光灯や水銀灯をLED照明に変える
- 施設・工場の断熱(外壁材や窓枠の交換、塗料の変更など)で冷暖房効率を上げる
- 太陽光パネルや風力発電などの再生可能エネルギーを導入する
- 工場内のエネルギー使用量をリアルタイムで監視し、無駄な使用を特定・削減する
- 廃熱を施設の暖房や温水供給に活用する
- 生産プロセスの見直しや装置の改善、省エネ型の生産機械設備の導入
- 電力会社の新プラン導入や大手契約などの再検討
上記を実践する場合の注意点として、省エネには中長期的な電力削減をもたらすための設備投資や従業員の意識改革(マインドセット)が必要です。
「省エネ法」で国が規制している
機械関連の製造業者に限ったことではありませんが、工場を持つ多くの企業は、「省エネ法」で国が規制しています。
具体的な数値で縛っているというよりも、「省エネ法」の中でしっかりと省エネに取り組んでいる企業は違反にならず、細かな報告が不要など面倒がなく、税制的な優遇の対象になる恩恵が受けられます。
社会貢献(SDGs、地球温暖化対策)
日本の企業は各国に定められたCO2削減目標値を目指して、企業が省エネを積極的に行う背景があります。
CO2削減に関連するのが温室効果ガス排出0を目指す「カーボンニュートラル」の実現です。
エネルギー効率の向上や技術革新により、2050年までの目標値到達を目指しています。
特に機械関連の製造業は、施設や工場の利用で多くのCO2を排出せざるを得ないため、必要なCO2の削減方針を自分たちで目標を決めて取り組む必要があります。
省エネに成功している企業は、この目標値がはっきりしています。
そこで、省エネで一定のCO2削減を目指すことにより、SDGsの達成や地球温暖化の対策など、企業の社会貢献を果たせるのです。
もちろん、省エネは企業に一定の法的制約と利益はあるものの、初期投資の費用負担も大きいため、企業間で意識に大きな差があります。
企業知名度・ブランド価値の向上
社会貢献は企業が地域に果たす役割としての側面が大きいですが、社会貢献のみでは企業の短期的な利益は得られません。
社会貢献は持続可能な企業のあり方を目指す考え方ですが、直ちに企業に利益や恩恵として返ってくるものではないためです。
あくまでも事業を続けるための社会的な役割に過ぎません。
しかし、省エネによる社会貢献を果たしている企業は、それによって直接的に利益を得られなくても、慈善活動や社会的な責任を果たせる企業としての位置づけが、企業のプラス要素として働くことがあります。
それが企業の優良さを示す実績です。
ステークホルダー(利害関係者)に対するアピール、就職採用者へのブランド価値向上などが代表的です。
企業が積極的に社会の役に立ち、地球環境などを守るというスタンスを周囲に示せます。
イメージアップにもつながるため、採用ではより多くの優秀な人材を集めやすくなりますし、事業参画や契約・提携したい関連企業も増えることでしょう。
製造業における電気代の内訳、割合
製造業では、工場で使う電気代の割合が、生産設備に偏っており、全体の83%もあります。残りは空調が9%、照明が8%です。
生産設備は商品を組み立てたり材料から作り出したり、加工したりといった工程に使う機械・システムのことです。
機械の稼動には当然ながら電気が使われています。
「kWh/月の」単位では、規模が小さい工場や中規模の工場では、10,000kWh/月〜50,000kWh/月ほどです。
大手が抱える大規模工場では、1,000,000kWh/月を超過します。
そのため、大きな工場ほど節電が社会貢献にもつながりやすいのです。
機械関連の製造業が実施したい効果的な省エネ方法
機械関連の製造業における効果的な省エネ方法は次の通りです。
- 再生可能エネルギーの導入(自家消費型太陽光発電+産業用蓄電池)
- 機械の効率向上(電子ブレーカー導入)
- 既存設備の変更・改修(LED照明、新しい空調の導入、施設・工場の断熱改修)
- エネルギーのモニタリングシステム(デマンド制御)の導入
上記の省エネ方法について、メリットやデメリット、注意点を詳しく解説します。
再生可能エネルギーの導入(自家消費型太陽光発電+産業用蓄電池)
まずは、一般家庭でも節電として使われている設備に「太陽光発電」があります。
再生可能エネルギーの導入といわれた時に、風力発電や地熱発電を思い浮かべる方もいますが、場所の確保や設備の費用負担、周囲への配慮など、太陽光発電ほど気軽には利用できません。
そのため、自家消費型太陽光発電の導入が省エネには向いています。
「自家消費型」は、電気を電力会社に売るのではなく、自社工場の設備に使用することです。
つまり、工場設備の動力として電力供給するのに使われます。
浮いた電力は節約できるため、3~7割ほどの節電に直結します。
生み出した電気すべてを当てる場合は、「全量自家消費型」と呼ばれます。逆に、工場以外ではスタンダードな電力会社に売ることを目的としている場合が「余剰売電型」です。
以下は、「自家消費型太陽光発電」のメリット・デメリットです。
メリット
- 一部、もしくはすべての電力を購入する必要がなくなる
- CO₂の排出量を減らせる
- 緊急時・災害時など独立した電力源で電力供給できる
- 税制上の優遇措置、即時償却の恩恵がある
デメリット
- 導入には高額な初期投資が必要になる
- 広い面積の用地確保が必要になる
- 定期的なメンテナンスが必須
- 天候や季節によって発電量が変動する(=安定供給できない)
- 製造過程や廃棄物処理において、環境への負荷が生じる
- 不法投棄や不適切処理、自然への有害物質流出につながる可能性がある
もちろん、電力販売契約モデルや補助金を活用して、デメリットを緩和することができます。
また、産業用蓄電池を太陽光発電に組み合わせることで、安定供給できないデメリットをカバーすることも期待できます。
産業用蓄電池には、災害などで工場がまわらなくなった時でも、一時的に産業用蓄電池でカバーするなどが可能です。
ただし、産業用蓄電池は太陽光発電を前提とした省エネ技術で、蓄電池を単発で利用すると効果は薄く、それに導入費用が高いことにも気をつけましょう。
機械設備における電力消費の制御(電子ブレーカー導入)
機械関連の製造業で省エネする方法の1つに、機械設備で電力の消費を抑える「電子ブレーカー」の導入が挙げられます。
電子ブレーカーは、電力を遮断・制御するためにCPUを備えた内蔵型の電力管理装置のことです。
負荷のかかる電力を安全の範囲内で抑えて、余計な電力消費を減らします。
導入する電子ブレーカー製品にもよりますが、製造業の省エネ効果として2割~6.5割の削減が期待できます。
メリット
基本料金の削減
電力の無駄な消費を抑える省エネ効果
事前通知による調節の容易さ
利用電力に合わせた容量設定ができる
デメリット
導入コストが発生する
契約電力によってはブレーカー落ちの対策が無駄になる
導入先業者を厳選する必要がある
電子ブレーカーは上手く活用できれば基本料金の削減につながります。
しかし、安易に契約の容量を下げると電子ブレーカーのメリットが得られず、ブレーカーがすぐ落ちてしまいます。
導入する際にも業者選定の手間と費用がかかりますから、慎重に選ぶことが必要です。
契約容量を変えるときもシミュレーションした上で、上限の設定を検討しましょう。
既存設備の変更・改修(LED照明、新しい空調の導入、施設・工場の断熱改修)
施設や工場の中には、省エネに取り組む際に、既存の設備を大きく変更する必要があるケースもあります。
例えば、LED照明の導入は、既存の蛍光灯や水銀灯の照明を破棄して新規に設置する必要があります。
新しい空調の導入では、既存の空調システムを一斉に取り替えること、施設の断熱改修なら、断熱素材や外壁の工事が必要です。
しかし、照明8%の空調9%で約2割程度の電力割合で規模は小さいとはいえ、改善することで省エネ効果は得られます。
具体的には、LED照明導入で5割~7.5割、省エネ適用の空調導入で3割~5割の削減です。
メリット
- 省エネによる一定割合の電力削減が期待できる
- 長期的な省エネが可能
- 太陽光発電や電子ブレーカーとは別のアプローチで省エネ
デメリット
- 既存設備の変更・改修は専門業者に依頼が必要
- 改修・変更のコストがかかる
- 変更・改修の内容によっては生産工程がストップする
空調は年単位での省エネ効果が見込めますし、LED照明は交換頻度も下げることができます。
断熱の外壁や内部の改修についても、一度施してしまえば、単純な消費電力を抑えられるため、電気を使わない部分でも節電に繋がります。
外壁や塗料は基本8~15年単位の耐用年数となるため、頻繁に交換が必要でないこともメリットです。
モニタリングシステム(デマンド制御)の導入
機械関連の製造業では、車や家電製品の製造といったように、設備の使用電力を制御・監視することで省エネを促すことができます。
その1つが「デマンド制御」です。
デマンド値と呼ばれる最大需要電力をピークに達する前に制御する方法です。
電力需要が高まる時間帯に電力使用を削減することで、電力需要のピークを抑制します。節電の割合は、0.5割~1.5割です。
メリット
- 電力の削減による省エネの実現
- 生産設備のシステム以外の電力制御・管理ができる
- 使用電力の「見える化」ができる
デメリット
- 電力制限による現場負担が生じることがある
- モニタリングや制御システムの導入コスト発生
ただし、デマンド制御システムで電力を抑えすぎると、現場の作業効率が下がり、生産性にとって逆効果になる場合もあるため注意が必要です。
機械関連の製造業で省エネに成功した事例
ここでは、機械関連の製造業で省エネに成功した事例を紹介します。
トヨタ自動車株式会社
創立1937年のトヨタ自動車株式会社は、世界的な自動車会社です。
さまざまな省エネの最先端技術を車づくりに応用するため電力会社と提携して研究・開発しています。
例えば、デマンド制御を利用した省エネとして「トヨタトータルデマンドマネジメント(TTDM)」という独自のエネルギー管理システムをすべての工場に導入しています。使用電力の削減を目的としており、必要最小限に抑えているのです。
また、「ガスコージェネレーション」と呼ばれる電力・熱を生み出す自家発電装置を導入し、全体の3割の電力を供給しています。電力量の使用を見える化した「トヨタトータルデマンドマネジメント(TTDM)」と組み合わせた省エネ運用としても知られています。
ブラザー工業株式会社
1934年に設立した国内大手電機メーカーのブラザー工業株式会社は、複合プリンタやミシンを製造しています。
省エネでは、空調システムに関して新冷媒R32の業務用エアコンを採用し、省エネと地球環境に優しい冷媒で社会貢献も果たしています。
株式会社クボタ
1890年に設立された株式会社クボタは、農業や建設の機械を製造する工場を稼働しています。
自社事業の中で環境保全にも取り組んでおり、省エネによるCO2削減もその一環です。
例えば、再生エネルギーの導入やエネルギー効率に優れた設備導入、電力の見える化、LED照明などです。
2022年にはLED照明の比率は79.8%に達しており、世界にあるすべての拠点で省エネ化が進んでいます。
年間4~5%の削減を実現しており、省エネの実績を積み上げている機械関連の製造業者です。
機械関連の製造業が省エネに取り組むならまずは電力から!
今回は、機械関連の製造業がさらなる省エネを目指す場合に、使用電力の見える化や削減が効果的なことを解説しました。
施設や工場で電力効率を高めるためには、家庭規模の節電とはまた違った取り組みが必要です。
特に工場は製造工程の中で8割以上の大量の電力が消費されるため、太陽光発電で完全な省エネの実現が難しく、LED照明や空調、断熱だけでは十分な節電には繋がりません。
そこで、「自家消費型太陽光発電+産業用蓄電池」の導入や電子ブレーカーによる基本料金削減、デマンド制御を使った使用電力の見える化と管理・抑制が有効です。
上記の方法で電力を削減するなど、自社に最適な省エネ方法を取り入れましょう。