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更新日:2024/11/20
すぐできる!旅館で効果的な省エネ方法と事例を解説
どういった業界においても「省エネ」は重要視されていますが、もちろん旅館業においても同様です。
接客業ということもあって経費削減は必要となってきます。
旅館では、空調が約29%、照明が約18%も電力消費の割合を占めます・
そのため、どのように省エネに取り組んでいくかが重要となってくるのです。
今回は旅館においてどのように省エネに取り組んでいくのかについて紹介していきたいと思います。
旅館で省エネが必要な理由と背景
旅館において省エネに取り組むべき3つの理由や背景があります。
- 利益面への影響
- 環境面への配慮
- 光熱費の占める割合の関係性
順番に詳しく解説します。
利益面への影響
旅館運営においては「売上」から「必要経費」を差し引いたものが「利益」となってきます。
そのため光熱費を削減するということによって必要経費を低下させることができるため、利益が増加することにつながります。
このように旅館で光熱費を削減することは利益UPに繋がり、省エネに取り組む重要性が見えてきます。
環境面への配慮
近年「温暖化対策」「環境面への配慮」など地球環境に対しての取り組みが重要視されるようになってきており、省エネ対策に取り組むことはどの企業にとっても重要な課題となっています。
また、2020年の政府の発表で「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」ことが宣言されたため、旅館が省エネに取り組むということは社会的にも必要となる取り組みとなっているのです。
1979年に制定された省エネ法においてもホテルや旅館を含む事業者は、年平均1%以上の省エネを行うことが求められています。
光熱費の占める割合の関係性
省エネに取り組むとしてもそもそも旅館における光熱費の割合が小さいのであれば、その効果も小さいものとなってしまいます。
しかし実際には旅館などでもっとも経費で大きな割合となっているのが「人件費の約44%」です。
ただ旅館業では顧客満足度を向上させるためには人件費を削るというわけにはいきません。
そのため他の経費を削減していくことが求められます。
経費で人件費の次に大きな割合を占めるのが「水道光熱費などの事業費の約20%」で、経費全体の5分の1を占めるこの部分の削減を行うことは効果も大きなものとなるのです。
そのため、省エネ効果も大きく、コスト削減などにも大きく関わってくることとなります。
旅館における電気代の内訳、割合
旅館では電力消費のうち、空調と照明の割合が多くを占めています。
すなわち2つのポイントを把握することが必要です。
- どういったことに電気が使われているか
- どの時期にどの場所で使われるのか
順番に解説します。
どういったことに電気が使われているのか
旅館において電気はさまざまなものに使用されています。
玄関、部屋などさまざまな場所に空調と照明が設置されており、照明が全体の電気代の約17%かかっています。
その他、コンセントが約8%、給湯が約10%などの電気代がかかってくるのですが、他に大きなものとしては「冷暖房費」があります。
夏場の暑い時期のクーラーや、寒い時期の暖房は非常に多くの電力がかかることとなります。
どの時期にどの場所で使われるのか
多くの電力を使う冷暖房ですが、これに関しては一年中一定というわけではなく、時期によって変わってきます。
冷房の消費電力は6月~9月に急激に上り、暖房は12月~2月ほどがピークとなります。
それに対して照明や給湯については一年中ほとんど一定となりますが、給湯については時間帯によって消費電力に違いがあります。
給湯は朝の7~10時と夜の21~23時の間が使用量が多くなります。
また、旅館の場所や部門ごとの消費量を見ていくと、やはり玄関などのパブリックスペースの照明や空調は大規模なものになりやすく、ここで多くの電力が消費されます。
大浴場、ロビー、廊下などでは安定して電力が消費されるものの急激に消費されることはありません。
ただ、宴会場や遊技場などでは決まった時間帯に多くの消費がされる傾向があります。
旅館で効果的な省エネ方法
旅館で効果的な省エネを行っていくにはどうすれば良いでしょうか。
ここでは旅館で節電、省エネを行っていく方法を具体的に紹介していきます。
LED照明に変える
旅館では宿泊客が利用する客室、ロビー、廊下だけでなく、スタッフルームやバックヤードなどでも多くの照明があり、電力が消費されています。
こういった場所では長らく白熱電球や蛍光灯が使われてきたのですが、近年はLED照明へ変更する旅館が増加してきました。
「蛍光灯」は筒状などの外観をしたものの内側に塗られている蛍光体に対して電気によって発生させた紫外線を当てて光を発生させる仕組みになっているものです。
日本では使いやすく、使用効率も良い照明として蛍光灯が長く使われてきました。
それに対してLED照明は、白熱電球や蛍光灯と比べると消費電力が少なく、寿命が長いという特徴があります。
蛍光灯は一般的に数千時間程度の寿命ですが、LED照明は数万時間以上の寿命となっており、数年~10年以上も交換が不要になる場合があります。
単価自体は白熱電球や蛍光灯より高いですが、圧倒的な「寿命の長さ」で交換の手間を省き、「消費電力の少なさ」によって省エネを実現できる照明器具となっています。
ただ、LED照明を交換する際に、ランプ部分だけを変えて交換後、発火の事故が増えたという声が増加しており、交換の際は器具に入ってる安定器や土台の器具ごと交換するようにしましょう。
設置する器具が適切なものではないのに無理やりLEDランプを取り付けてしまうと電流の違いの影響で、発火したり、切れやすい危険性があるので避けましょう。
工事費用がかかってくることにはなるのですが、LED照明に交換することで一般的に電気代はおよそ1/3から1/5になると言われています。
規模によりますが、年間にすると数万~数十万円以上の削減額となってくるため、省エネ効果としてはかなり高いものとなり、数年で交換費用は元が取れることとなります。
空調関係を見直す、整備する
旅館では顧客満足度をあげるためには空調設備はきちんと管理しなければなりません。
空調を管理することで効率よく利用することができ、省エネに取り組んでいくこともできます。
ここでは空調関係で取り組める工夫について紹介していきます。
エアコンクリーニング、フィルター、室外機などの掃除を定期的に行う
エアコンは定期的に掃除をしないとエアコンの内部、フィルター、室外機などにゴミや埃が溜まってきてしまいます。
エアコンにゴミなどが溜まってしまうことで使用時の運転効率が下がるだけでなく、排出する空気も綺麗なものでなくなり、においがしたりすることも増えてきます。
エアコンが持っている本来の性能、能力が出せなくなってしまうのです。
このように本来の性能通りの運転ができないと正常に稼働している時よりも多くの電力を使用して運転することとなってしまいます。
つまり無駄な電力をかけてしまうこととなります。
当然ですが、旅館という接客業ですので汚い空気を出す、においが出るということなどは良くありません。
省エネのためにも衛生的な観点からも定期的に清掃、掃除をしていくということが重要だと言えるでしょう。
夏場、冬場の設定温度を少し緩めに設定する
旅館などでは夏の暑い時期には設定温度を低くして冷房を全開に効かせたいということがあります。
しかし、夏場のエアコンの設定温度は1℃上げることで電気代を10%節約できるとも言われています。
また、最近では建物内が寒すぎるということは嫌うというお客も増えていますし、外との温度差がありすぎるのは体にも悪いという認識をされることも多くなってきています。
かといって建物内が暑いというのはよくありません。
その場合はエアコンの設定温度は少し緩めにしておいて、扇風機やシーリングファンなどを併用することで体感温度を下げる効果を期待するという方法もあります。
夕方になって気温が低くなってくるとそれに合わせて設定温度を変化させていくということも効果があります。
また、細かいことですが、建物外部に設置しているの室外機の周りに多くの荷物が置かれていたり、排気口を塞いでしまっていたりするとエアコンの運動効率が下がりますので余計に電力がかかることとなります。
そのため室外機周辺の整理も重要となります。
これは冬場も同様で旅館の外が寒いのに建物内が暑すぎると急激な温度差が発生することとなるのであまり健康にもよくありません。
暖かくする程度の温度設定を心がけると良いでしょう。
空調を自動化する
空調を自動で制御したり、管理することも効率性が上がります。
エネルギーマネジメントシステムや空調制御のシステムを利用することで、人力の手間がなくなり、めんどくさいことも軽減されます。
詳しくは下記記事で解説してますのでご覧ください。
給湯設備を見直す
旅館では給湯関係にも多くのエネルギーを消費しています。
給湯設備が老化している場合などはそれを新しいものにすることで省エネを達成できる場合があります。
例えば旅館には大型のボイラーが設置されることが多いのですが、20~30年前のボイラーを新しいボイラーに交換することで稼働効率が15~20%上昇すると言われています。
これだけ稼働効率が上昇すれば消費電力は下がり、省エネにもつながるでしょう。
また、初期費用がかかりますが、CO₂冷媒ヒートポンプ給湯機という大気から熱を回収してお湯を沸かすという機器を採用するという方法もあります。
こちらも長期的に見ればかなりの省エネ効果があります。
太陽光発電を設置する
旅館を含む多くの事業者が注目、採用してきている省エネの取り組みに「自家消費型太陽光発電」というものがあります。
こちらは事業者の敷地内にて太陽光発電を行って電気を作り、その電気を電力会社に売ることなく自社で消費するというシステムです。
自家消費型太陽光発電については下記記事で解説しています。
省エネに成功している事例
こういった省エネに取り組んでいる事業者は増えてきており、すでに確かな成果が出ているところも多くなってきています。
ここではそれらの事業者をいくつか紹介していきます。
株式会社ホテル日航福岡
ホテル・旅館関係ではホテル日航福岡が省エネの成果を出しています。
こちらのホテルではエネルギーマネジメントシステムを導入し、総合的にエネルギー管理をすることでエネルギー使用量を管理することに成功しました。
そうしてこの取り組み結果を定期的に提示することによって省エネ意識を高めていくことによって、省エネ率20%、費用にして年間5700万円もの費用対効果を実現しています。
リゾートトラスト株式会社
こちらも国内に多くのホテルやゴルフ場などのリゾート施設を展開している企業です。
リゾートトラストグループでは、国内すべてのホテルとゴルフ場に太陽光発電システムを導入するとしており、2022年度以降それぞれの設置条件に合わせて建物の屋上、駐車場の屋根などに太陽光発電システムを順次導入しています。
これから着工するホテルについては太陽光発電によって、日中の消費電力のうち約80%を自家消費型太陽光発電にてまかなう予定となっています。
まとめ
旅館では空調設備や照明などに多くの電力を消費しています。
そこで省エネに取り組むということは節電効果、経費の削減といった実益をもたらすだけでなく、対外的に向けても環境に配慮した取り組みを行っている社会的評価を高めることも期待できるものとなっています。
特にLED照明に変更、空調設備の電気使用量削減をや太陽光発電システムを設置することは大きな省エネ効果が期待できますので、ぜひ取り組んでいきましょう。