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エネルギーフレキシビリティとは?仕組みやメリット、注目される背景をわかりやすく解説
最近、省エネやGXの話をしていると、「エネルギーフレキシビリティ」という言葉を目にする機会が増えてきました。
ただ、言葉だけを見ると少し難しく感じます。
「省エネと何が違うのか」
「デマンドレスポンスやVPPとは別の話なのか」
「企業にとって、結局どんなメリットがあるのか」
このあたりが分かりにくいのではないでしょうか。
エネルギーフレキシビリティをかなり簡単に言えば、電気をただ減らすのではなく、使う時間や量を状況に応じて柔軟に変える考え方です。
これまでの省エネは、「どれだけ使用量を減らすか」が中心でした。もちろん、それは今でも重要です。
一方で、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーが増えてくると、「いつ使うか」まで考えないと、エネルギーをうまく使い切れない場面が増えてきます。
この記事では、エネルギーフレキシビリティの意味から、省エネとの違い、DR・VPPとの関係、企業が取り組むメリットまで、できるだけ専門用語をかみ砕いて解説します。
エネルギーフレキシビリティとは
エネルギーフレキシビリティの意味
エネルギーフレキシビリティとは、電力の需給状況や施設の利用状況などに合わせて、電気を使う量やタイミングを柔軟に変えられる状態を指します。
少し言い換えると、「必要な電気は使う。ただし、使い方は工夫する」という考え方です。
例えば、ある工場で午後2時に電力使用が集中しているとします。その時間帯に動かさなくても問題のない設備があれば、稼働時間を午後3時以降にずらす。あるいは、複数の設備が同時に動かないようにする。
これもエネルギーフレキシビリティの一例です。
逆に、太陽光発電が多く発電していて電気が余りやすい昼間には、蓄電池やEVを充電するという考え方もあります。
大事なのは、単純に「使わない」ことではありません。
使う時間をずらす、少し減らす、逆に余っている時間は使う。
こうした調整ができること自体が、これからのエネルギー利用では価値を持つようになっています。
エネルギーフレキシビリティは、電気を節約するためだけの考え方というより、電力を無理なく、うまく使うための考え方と捉えると理解しやすいでしょう。
従来の省エネとの違い
エネルギーフレキシビリティと省エネは、似ているようで少し目的が違います。
従来の省エネで重視されてきたのは、基本的にエネルギーの使用量そのものを減らすことです。
例えば、蛍光灯をLEDへ交換する、高効率な空調設備へ更新する、断熱性能を高めるといった取り組みが分かりやすい例です。
設備の効率を上げて、同じ仕事をするために必要な電力を少なくする。これが一般的な省エネの考え方です。もちろんこれも大事です。
一方、エネルギーフレキシビリティでは、必ずしも使用量そのものを減らす必要はありません。
1日に100kWh使う設備があったとして、1日の使用量が100kWhのままだったとしても、電力需要が集中する時間から比較的余裕のある時間へ稼働を移せれば、それには意味があります。
つまり、
省エネは「使う量を減らす」
エネルギーフレキシビリティは「使う量や時間を調整する」
という違いです。
実際には、この2つは対立するものではありません。
まず省エネで無駄な使用量を減らし、そのうえで残った電力需要を柔軟に調整する。
企業のエネルギー対策を考えるなら、この両方を組み合わせていくのが自然だと思います。
エネルギーフレキシビリティが注目される背景
太陽光・風力など再生可能エネルギーが増えている
エネルギーフレキシビリティが注目される理由の一つは、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーが増えていることです。
再生可能エネルギーはCO2削減につながる一方、少し扱いづらい面もあります。
例えば太陽光発電は、晴れた昼間には多く発電できますが、夜には発電できません。風力発電も、風の状況によって発電量が変わります。
つまり、必要なときに必要な分だけ発電する、という調整が簡単ではありません。
ここで重要になるのが、電気をつくる側だけで調整するのではなく、使う側も合わせて動くという考え方です。
昼間に太陽光発電の電気が余っているのであれば、その時間に蓄電池やEVを充電する。設備の稼働時間を調整できるのであれば、昼間へ寄せる。
反対に、夕方など電力需要が集中する時間帯には、一部の設備使用を抑える。
これまでの電力システムは、需要に合わせて発電側を調整する考え方が中心でした。
これからは、それに加えて、需要側も少し動く。
再生可能エネルギーを本当に使いこなすには、この需要側の柔軟性が欠かせなくなってきています。
電力は「使う量」だけでなく「使う時間」が重要になっている
省エネの話では、「年間で何kWh削減できたか」がよく使われます。
もちろん、それは分かりやすい指標です。ただ、今後はそれだけでは少し足りません。
電力は、いつ使うかによっても意味が変わるからです。
例えば、真夏の午後に多くの企業や家庭が一斉に空調を使うと、電力需要は大きく膨らみます。
逆に、春や秋の晴れた昼間には、太陽光発電が多く発電し、地域によっては電気が余る場面もあります。
そのため、同じ10kWhを使うにしても、電力が足りない時間に使うのか、余っている時間に使うのかでは、電力システム全体から見た意味が違います。
この考え方は、日本の制度にも反映されつつあります。
以前は「電力需要を平準化する」という考え方が中心でしたが、現在は「電気の需要を最適化する」という考え方が重視されています。
電気が不足しそうな時間には使用量を減らす。
逆に、再生可能エネルギーが余っている時間には使用量を増やす。
省エネというと「とにかく減らす」という印象がありますが、今後はもう少し柔軟に、使うべき時間に使うという発想が必要になってきます。
エネルギーフレキシビリティを実現する方法
空調など電力を使用する設備を制御する
企業がエネルギーフレキシビリティに取り組む場合、最初に考えやすいのが、空調や生産設備などの制御です。
特に、オフィス、病院、介護施設、物流施設、小売店舗、工場などでは、空調設備が大きな電力を使っているケースがあります。
ここでよく誤解されるのですが、設備制御というと「空調を止める」というイメージを持たれがちです。
実際には、そこまで単純な話ではありません。
例えば、複数台ある空調設備を同時に動かさず、タイミングを少しずらす。電力需要が一時的に高くなりそうなときだけ、一部の設備出力を調整する。
こうした方法でも、ピーク電力を抑えることはできます。
ポイントは、止められる設備を探すことではなく、調整できる余地を探すことです。
施設内には、常に100%の状態で動かし続けなければならない設備もあれば、多少の時間調整ができる設備もあります。
その違いを整理しながら、利用者の快適性や業務への影響をできるだけ抑えて制御する。
エネルギーフレキシビリティを実際の現場で考えるなら、この視点はかなり重要です。
蓄電池・太陽光発電・EVを活用する
蓄電池、太陽光発電、EVも、エネルギーフレキシビリティを考えるうえで重要な設備です。
太陽光発電を例にすると、昼間に発電した電気をそのまま使うだけでは、施設の需要が少ない時間には電気が余ってしまいます。
そこで蓄電池があれば、余った電気を一度ためておき、夕方など需要が高くなる時間に使えます。
これはとても分かりやすい「時間をずらす」仕組みです。
EVも同じです。
社用車としてEVを導入している企業であれば、すべての車両を帰社後すぐに充電する必要はありません。
翌朝までに充電が終わればよいのであれば、電力需要が集中しない時間に分散して充電することもできます。
また、V2BやV2Hの仕組みを使えば、EVに蓄えた電気を建物側へ戻すこともできます。
このように考えると、太陽光、蓄電池、EVはそれぞれ独立した設備ではありません。
つくる、ためる、使う。
これらをまとめて考えることで、初めてエネルギーを柔軟に動かせるようになります。
設備単体の導入効果だけでなく、「どう組み合わせて使うか」まで考えることが、今後ますます重要になっていくでしょう。
EMSでエネルギーを見える化・最適化する
エネルギーフレキシビリティを実現しようとすると、最終的には「今どのくらい電気を使っているのか」が分からないと始まりません。
そこで使われるのがEMSです。
EMSは、Energy Management Systemの略で、エネルギー使用量を計測したり、見える化したり、設備を制御したりする仕組みです。
ただ、ここで大事なのは、見える化するだけで終わらないことです。
電力使用量のグラフを見て、「この時間に多く使っています」と分かるだけでも意味はあります。
ただし、エネルギーフレキシビリティの考え方では、そこからさらに一歩進めて、
「なぜこの時間に増えているのか」
「どの設備なら少し動かせるのか」
「自動で制御できないか」
と考えていきます。
例えば、デマンドが一定値を超えそうになったら空調を自動制御する。太陽光の発電量が多い時間には蓄電池へ充電する。
こうした動きまでできるようになると、EMSは単なる監視装置ではなく、エネルギー利用を調整する仕組みになります。
見える化はゴールではありません。
見えたデータを、実際の運用にどう使うか。
そこまでつなげて考えることが重要です。
エネルギーフレキシビリティとDR・VPPの関係
デマンドレスポンス(DR)とは
エネルギーフレキシビリティを調べていると、ほぼ必ず出てくるのがデマンドレスポンス、いわゆるDRです。
DRとは、電力の需給状況に応じて、需要家が電気を使う量や時間を変える取り組みです。
言葉だけでは少し難しいですが、やっていること自体はシンプルです。
電力が足りなくなりそうなときには、使用量を減らす。
反対に、太陽光発電などによって電力が余っているときには、使用量を増やす。
前者は「下げDR」、後者は「上げDR」と呼ばれます。
例えば、真夏の夕方に電力需要が集中しているとき、空調や一部の設備の使用量を少し抑える。これが下げDRです。
一方で、晴れた昼間に太陽光発電による電気が余っている場合、その時間に蓄電池やEVを充電する。これが上げDRです。
エネルギーフレキシビリティとの違いを整理すると、エネルギーフレキシビリティは「柔軟に動ける能力」、DRは「その能力を使って実際に需要を動かす仕組み」と考えると分かりやすいです。
今後、再生可能エネルギーが増えるほど、このDRの役割は大きくなっていくでしょう。
VPP(バーチャルパワープラント)とは
もう一つ関連して出てくるのが、VPPです。
VPPはVirtual Power Plantの略で、日本語では「仮想発電所」と呼ばれます。
ただ、名前から想像するほど難しい仕組みではありません。
例えば、100の施設に蓄電池や空調設備があり、それぞれが少しずつ電力需要を調整できるとします。
1施設あたりの調整量は小さくても、100施設をまとめれば大きな調整力になります。
この複数の設備を、IoTやシステムを使ってまとめて管理し、一つの発電所のように動かす考え方がVPPです。
対象になるのは、太陽光発電や蓄電池だけではありません。
EV、空調設備、生産設備なども、条件によってはエネルギーリソースになります。
ここが面白いところです。
従来、工場や店舗の設備は「電気を使うもの」でした。
ところが、電力使用量を調整できるようになると、電力システム側から見れば「調整力を提供できる資源」になります。
エネルギーフレキシビリティが個々の施設の柔軟性だとすれば、VPPは、その柔軟性を束ねて大きな価値に変える仕組みだと考えると理解しやすいでしょう。
企業がエネルギーフレキシビリティに取り組むメリット
電気料金の削減につながる
企業にとって、エネルギーフレキシビリティの一番分かりやすいメリットは、電気料金の削減につながる可能性があることです。
特に高圧電力を利用している施設では、電力量だけでなく、契約電力も電気料金に影響します。
そのため、年間の使用量を減らすだけでなく、電力需要が一時的に大きくなるピークを抑えることも重要です。
例えば、複数の空調設備や生産設備が同時に立ち上がると、その時間だけ需要電力が大きく跳ねることがあります。
そこで、設備の稼働を少しずらしたり、一部の設備を自動制御したりすることで、ピークを抑えられる可能性があります。
ここでポイントになるのは、必ずしも大規模な設備更新が必要ではないことです。
既存の設備でも、運用方法や制御の仕方を変えることで改善できる場合があります。
つまり、
電気を減らすだけではなく、使い方を変えて電気料金を抑える。
これがエネルギーフレキシビリティの特徴です。
省エネ設備への更新と比べて、運用改善から始められる場合がある点も、企業にとっては取り組みやすい部分でしょう。
再生可能エネルギーを有効活用できる
エネルギーフレキシビリティを高めることは、再生可能エネルギーを有効に使うことにもつながります。
太陽光発電を導入したからといって、発電した電気をすべて効率よく使えるとは限りません。
太陽光は昼間に多く発電しますが、その時間に施設側の電力需要が少なければ、電気が余ることがあります。
そこで重要になるのが、需要側を少し動かすことです。
例えば、EVの充電時間を昼間に寄せる。蓄電池に充電する。時間調整できる設備があれば、その稼働を昼間へ移す。
こうすることで、自社で発電した電気を使いやすくなります。
逆に、夕方など太陽光発電量が減り、電力需要が増える時間には、蓄電池から放電する。
こうした調整ができると、再生可能エネルギーの価値はかなり変わってきます。
再エネは「設置して終わり」ではありません。
設備を導入したあとに、どう使い切るかまで考える必要があります。
今後、太陽光発電の導入がさらに増えていくのであれば、発電設備そのものだけでなく、需要側の調整もセットで考えることが重要になっていくでしょう。
脱炭素・GXへの対応につながる
エネルギーフレキシビリティは、企業の脱炭素やGXを考えるうえでも重要な考え方です。
これまで脱炭素対策というと、高効率設備への更新や太陽光発電の導入が中心でした。
もちろん、これらは今後も必要です。
ただ、設備を導入するだけでは、その効果を十分に引き出せないことがあります。
例えば、高効率な空調設備を導入しても、必要以上に動かしていればエネルギーは無駄になります。
太陽光発電や蓄電池を導入しても、発電量や需要を見ずに運用していれば、せっかくの設備をうまく使えません。
そこで重要になるのが、運用です。
設備を更新する。
電力使用量を把握する。
状況に応じて設備を制御する。
需要そのものを最適化する。
ここまでつながって初めて、エネルギー対策として完成度が高くなります。
GXという言葉は大きく聞こえますが、実際の現場では、こうした一つひとつの運用改善の積み重ねです。
エネルギーフレキシビリティは、省エネ、再エネ、EMS、DRといった別々に見える取り組みを、一つにつなぐ考え方として捉えると分かりやすいでしょう。
今後は「省エネ」から「エネルギーを賢く使う」時代へ
これまでの企業のエネルギー対策では、「どれだけ電力使用量を減らせるか」が一つの大きなテーマでした。
この考え方自体は、これからも変わりません。
ただ、今後はそれだけではなくなります。
再生可能エネルギーが増えれば、電気が不足する時間だけでなく、逆に余る時間も出てきます。
そのため、これからは
どれだけ使ったか
だけではなく、
いつ使ったか
まで考える必要があります。
空調、生産設備、蓄電池、太陽光発電、EV。
これらを個別に見るのではなく、ひとつのエネルギーシステムとして捉え、必要に応じて動かしていく。
これがエネルギーフレキシビリティの基本的な考え方です。
これまでの流れを整理すると、
省エネ
↓
見える化
↓
設備制御
↓
電力需要の最適化
↓
エネルギーフレキシビリティ
という形で、企業のエネルギー対策は少しずつ広がってきています。
「エネルギーフレキシビリティ」という言葉だけを見ると、新しい専門用語に感じます。
ただ、やっていることは、電気を無駄なく使い、必要に応じて使い方を変えるというものです。
そう考えると、決して遠い話ではありません。
電気料金の削減、省エネ、再生可能エネルギーの活用、脱炭素。
これらをバラバラに考えるのではなく、まとめて考えるためのキーワードとして、今後さらに使われる場面が増えていくでしょう。

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