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更新日:2024/11/21
【初心者向け】Jクレジット制度とは?メリットや申請方法についても解説
企業経営における指針の一つとして、国内でも環境に対する意識の高まりを感じる昨今、「Jクレジット制度」の利用を検討する企業も増えています。
しかし、その必要性や具体的な申請方法など、具体的なポイントを理解している人は多くないのではないでしょうか。
この記事では、Jクレジット制度の基本情報やメリット、具体的な申請方法や申請要件などについて解説します。
制度の利用を検討する企業担当者にとって必要な情報ですので、是非参考にしてください。
Contents
Jクレジット制度とは
まずは、Jクレジット制度がどのようなものであるか、基本的な情報を解説します。
制度の仕組み
Jクレジット制度は、企業や自治体などが取り組む排出削減・吸収の成果を温室効果ガスの「クレジット」として国が認証し、これを購入・売却可能にした仕組みです。
この制度では、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの利用、適切な森林管理による吸収量がクレジットとなります。
これらは市場で売買され、得られた資金は事業の拡大や投資回収に活用されます。
企業や自治体は、取り組みの成果を金銭的に評価され、同時に環境への貢献が具体的な数字として表れるのです。
購入者は、Jクレジットを購入することでその自治体や企業が温室効果ガス排出の削減・吸収に参加したということで、環境貢献の一翼を担うことになります。
また、購入することで企業評価の向上やPR効果の効果があり、環境に対する取り組みを強化する手段となるのです。
このように、企業や自治体にとって環境と経済の両面でプラスとなる仕組みとなっています。
Jクレジットの使い道
地球温暖化対策の法律である温対法や省エネ法に基づく報告に利用可能です。
具体的には、調整後温室効果ガス排出量や共同省エネルギー事業といった報告にJクレジットが活用されます。
また、国際的なNGOであるCDPや温室効果ガス削減目標を設定するSBT、再生可能エネルギーで電力を賄う取り組みであるRE100においても活用が可能です。
企業は再エネ熱や再エネ電力由来のJクレジットを報告に利用し、環境情報を提供することで投資家向けの信頼を高めることができます。
さらに、排出されたCO2を他の場所の削減で吸収する用途でも利用可能です。
これにより、企業や自治体は環境への取り組みを具体的な数字として示し、法令遵守や国際的な環境基準に対応できます。
Jクレジットが注目されている理由
近年、この制度が注目されている理由は、世界的な脱炭素への動きが進む中、地球温暖化対策やSDGsへの取り組みの重要性が高まっているからです。
国際的な枠組みであるパリ協定や2050年カーボンニュートラル宣言、地球温暖化対策推進法などが、1.5℃の気温上昇抑制への努力を促進し、温室効果ガス削減に対する責任を規定しています。
企業や自治体の活動内容によっては、再生可能エネルギーの比率増加や温室効果ガスの削減・吸収が求められつつも、それが難しいことも珍しくありません。
この制度は、そういった事業上の制約を補完し、温室効果ガスの排出の埋め合わせとしての機能もあります。
企業や自治体が個別には難しい環境問題への取り組みが、Jクレジットの利用によって社会全体として実現可能となります。
これにより、企業や自治体は持続可能な発展への一翼を担い、地球環境に対する共同の責任を果たすことができるのです。
Jクレジットのメリット
制度を利用することで、以下に挙げるようなメリットがあります。
創出者のメリット
まずは、創出者におけるメリットを解説します。
1:企業のイメージ向上
Jクレジットの創出者にとって、「企業のイメージアップ」は重要なメリットの一つです。
自主的な排出削減や吸収プロジェクトの実施により、企業は積極的な温暖化対策へのコミットメントをアピールできます。
この取り組みを積極的にPRすることで、環境への配慮や社会的責任の重要性をアピールし、消費者やステークホルダーからの信頼を獲得します。
企業のイメージアップは、競争激化するビジネス環境において差別化を図り、ブランド価値を高める重要な手段です。
さらに、CSR(企業の社会的責任)への取り組みが顕著になる現代社会において、環境への取り組みは企業の社会的な評価にも影響を与えます。
したがって、Jクレジットを通じて創出される環境への貢献が企業のイメージアップに直結し、企業の存続のための鍵となるのです。
2:クリーンエネルギーの導入
クリーンエネルギーの導入は、省エネ設備や再生可能エネルギーの有効活用を通じて、企業や組織がランニングコストを低減し、環境にやさしいエネルギーを採用する手段です。
省エネ設備の採用により、エネルギー使用効率が向上し、運転コストが削減されるだけでなく、環境への負荷も軽減されます。
また、再生可能エネルギーの活用は、風力や太陽光など自然の資源を活かした持続可能なエネルギーの採用を意味し、二酸化炭素などの有害物質の排出を削減します。
これにより、企業はエコフレンドリーなイメージを構築し、同時にクリーンエネルギーの普及につながるのです。
3:クレジット売却益の獲得
クレジットの売却益の獲得は、設備投資において重要な手段です。
一部の設備投資に充てる資金を、クレジットの売却によって調達することで、投資費用の回収を促進し、さらなる省エネ投資に資金を振り分けることが可能です。
また、売却によって得られる利益は、設備導入にかかる初期コストを一部補填するだけでなく、企業や組織が環境に貢献して得たリターンでもあります。
これは企業にとって、将来性を確保しながら、同時に環境への取り組みを拡大できるチャンスです。
売却益の獲得は、環境への投資をより効果的にし、企業のエコフレンドリーなイメージを向上させ、市場での競争優位性を構築する一環となります。
4:新しいネットワークの創出
創出したクレジットは、地元に深く根ざした企業や地方公共団体との新しいネットワークの構築ができます。
これは、地産地消的なアプローチを通じて、クレジットを地元で活用することによって生まれる連携や協力関係が築けることを指します。
例えば、地元に縁の深い企業が制度を活用することで、地域社会とのパートナーシップが強化され、共に持続可能な取り組みを進める土壌が生まれるのです。
同様に、地方公共団体がクレジットを有効に活用することで、地域の環境保護や再生可能エネルギーの普及などにおいて、新たな連携が生まれるでしょう。
このような新しいネットワークの形成は、地域社会全体において持続可能な価値を共有し、協力関係を強化していく上で重要な一翼を担っています。
5:組織内での意識向上
制度へ参加することで、省エネの実績を具体的な数値として可視化する手段となり、組織内のメンバーにとって意欲向上や意識改革の契機となります。
取り組みが数値化されることで、組織全体での省エネ効果が見え、メンバーは自身の貢献が具体的に評価されていることを実感するでしょう。
これにより、組織内での取り組み意欲が高まり、メンバーはより積極的に省エネ活動に参加する傾向が生まれます。
また、数値の可視化は組織文化の一環となり、持続可能な価値観が浸透することで、組織全体の意識改革が実現できます。
Jクレジット制度は、組織の省エネ取り組みを実質的な成果として示し、メンバーの関与と共感を生み出す重要なツールと言えるでしょう。
購入者のメリット
次に、Jクレジットの購入者におけるメリットを解説します。
1:企業のイメージ向上
企業がJクレジットを購入することで得られるメリットは、2つの側面で企業のイメージ向上が期待できることです。
まず、環境に貢献する企業としてのPR効果があります。
クレジットの購入を通じて、日本各地の森林保全や中小企業の省エネ活動を支援し、その結果として企業は環境への貢献度を具体的な行動としてアピールできるでしょう。
また、企業評価の向上も期待できます。
温対法・省エネ法の報告や企業評価調査において、クレジットの購入がアピールポイントとなり、企業の環境への取り組みが高く評価されるでしょう。
これにより、企業は社会的な期待に応えるとともに、競合他社との差別化を図り、持続可能な経営の一環として評価を受けることができます。
2:商品・サービスの差別化
CO2排出量のオフセットは、製品やサービスにおいて差別化とブランディングを実現する重要な手段です。
製品やサービスの生産・提供に伴うCO2排出を削減することで、企業の環境に対する姿勢を示し、同時に市場競争において差別化を図ることができます。
この取り組みは、商品やサービスに付加価値を与え、環境に対する意識が高まる現代社会において顧客の購買意欲を引き上げる効果が期待されます。
また、CO2オフセットがブランドの一環となることで、企業の社会的な責任としての立場を強調し、消費者やステークホルダーとの信頼関係を築くことが可能です。
商品・サービスの差別化は、環境への取り組みが市場での強みとなり、企業にとって持続可能なビジネス展開につながります。
3:タッチポイントの拡大
クレジットの購入は、企業や地方公共団体との新しいネットワークの構築を通じて、タッチポイントを効果的に拡大する手段です。
この新しいネットワークを活用することで、ビジネス機会の発見や新たなビジネスモデルの創出が可能となります。
クレジット購入を通して築かれた関係は、単なる取引関係を超えて、相互の利益を追求するパートナーシップへと発展します。
これにより、企業は新たな市場や顧客層にアクセスし、地域社会との連携を深めながら持続可能なビジネス機会を追求できるのです。
さらに、このネットワークを通して得た情報は、企業の戦略策定において有益な要素となり、競争力を向上させます。
こうして、クレジットの購入を通じて構築されたネットワークは企業にとって、成長と革新の道を開くきっかけとなるのです。
Jクレジットを利用する際の注意点
続いて、制度を利用する際の注意点について解説します。
1:認証期間は2031年3月まで
Jクレジットには、認証期間に制限があります。
認証申請は期限が設けられており、提出された認証申請書類を基に内容を審議し、排出削減・吸収量をJクレジットとして認める必要があります。
認証対象期間は「プロジェクト登録申請日かモニタリング開始日のいずれか遅い方から最大8年経過する日」、もしくは「2031年3月31日」のいずれか早い方までの期間です。
その後、認証申請期間は認証対象期間終了後1年間が与えられます。
認証を忘れるとこれまでの努力が無駄になる可能性があるため、対象期間終了後は迅速に申請することが重要です。
期限を守り、効果的なクレジットの取得を図ることが重要です。
2:種類ごとに利用制限がある
各クレジットの種類には、利用法に制限が存在します。例えば、省エネ法での報告に活用する場合、省エネルギー関連の用途以外は利用できません。
同様に、RE100での報告では再生可能エネルギー関連の用途でのみが利用可能であり、厳格な制限が設けられています。
ただし、温対法やカーボンオフセット、SHIFT事業、ASSET事業の目標達成においては、あらゆるクレジットの活用が可能です。
2023年1月現在の状況において、これらの情報は有効ですが、状況は絶えず変化しています。
最新の情報は環境省の公式サイトで確認することが良いでしょう。
制限事項を把握し、各クレジットの特性を理解することが、効果的な利用につながります。
3:無効化手続きすると修正できない
無効化手続きを行うと、一度入力・実行した内容に対しては変更、追加、修正が一切できません。
この手続きはクレジットの再販売や再利用を防ぐために行われ、不正利用を防ぐ観点からも修正や変更には厳格な制限が設けられています。
実行ボタンを押す前には、入力した内容が正確であるかを細心の注意を払う必要があります。
無効化手続きは慎重に行われるべきであり、一度実施されるとその内容に再度手を加えることは不可能です。
Jクレジットの申請方法
続いて、実際にJクレジットを申請する方法を解説します。
発行する方法
企業がJクレジットを認証・発行するためには、「プロジェクトの登録」と「モニタリングの実施」の2ステップの申請が必要になります。具体的には、以下の通りです。
なお、モニタリングとは、実際の温室効果ガス削減がどれくらいされているかを計測するための工程です。
<STEP1:プロジェクトの登録>
- Jクレジット制度向けのプロジェクト計画書を作成する
- 必要な書類をJクレジット制度の運営事務局に提出する
- 認証委員会に承認されれば、プロジェクト登録される
<STEP2:モニタリングの実施>
- モニタリング報告書を作成する
- 必要な書類をJクレジット制度の運営事務局に提出する
- 検証・審査通過後、有識者委員会を経由して国による認証手続きが進行する
- 認証委員会に承認されれば、クレジットが認証・発行される
売却・購入する方法
Jクレジットを売却・購入するには、主に以下の3つの方法があります。
- Jクレジット・プロバイダー経由で購入する
- Jクレジット制度HP
- 入札制度
まず、仲介業者の「Jクレジット・プロバイダー」を通じて売買する方法では、売買仲介を行う事業者を通じて取引を進め、価格は仲介業者との合意に基づいて決まります。
この方法では、売買手続きを含めてサポートが受けられるのが特徴です。
次に、「Jクレジット制度HP」で売買する方法では、公式HPに掲載されているクレジット一覧から進めることができます。
価格や取引については、発行企業や行政と直接調整していきます。
最後に、「入札制度」を利用して売買する方法があります。
制度事務局が保有しているクレジットに参加し、入札に成功すればJクレジットを取得できます。
Jクレジットの申請要件
制度への参加してプログラム登録するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 日本国内で実施されること。
- プロジェクト登録を申請する日の2年前以降に稼働した設備が対象であること。
- クレジットの認証対象期間は、プロジェクト登録申請日又はモニタリングが可能になった日のいずれか遅い日から8年間(森林経営活動プロジェクトは登録申請した年度の開始日から最大16年間)。ベースラインを再設定しても削減が見込まれる場合最大16年まで延長が可能(過去分は除くことに注意)。
- 類似制度(例:グリーン電力証書)や本制度において、同一内容の排出削減活動がプロジェクト登録されていないこと。
- 追加性を有すること。
- 本制度で定められた方法論が適用できること。
- 審査機関による第三者認証を受けていること。
- 森林プロジェクトの場合のみ、プロジェクト終了後も継続的(10年間)に適切な森林
- 管理を実施、報告すること(永続性担保措置)。
- クレジットを他者に移転・発行した場合、その削減価値は主張できなくなること。
まとめ
Jクレジットをうまく活用することで、企業におけるビジネス運用と環境問題への対応が同時に実施できます。
また、自社だけでは目標を達成できなくても、購入者となることで間接的に環境問題に対する活動に貢献することで、目標達成を目指すこともできます。
環境問題への配慮や取り組みは、これからの将来を見据える企業において必要不可欠となる経営課題です。
Jクレジットを活用して、地球全体の環境問題に積極的に関わり、理想的な社会の実現を目指しましょう。