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太陽光パネルの寿命は?耐用年数や長く使う方法を紹介
太陽光発電投資で高く安定した収益をあげ続けるには、設備が可能な限り長期間稼働させ続けることが必須です。
そのため、太陽光パネルをはじめとする設備の寿命を把握した上で、修理、買い替え、撤退(売却・処分)などの意思決定を行うことが重要と言えるでしょう。
そこで今回は、太陽光パネルの寿命について、耐用年数や太陽光パネルを長く使う方法、コストを抑えてメンテナンス、買い替えを行う方法などを解説します。
Contents
太陽光パネルの寿命
まず、太陽光パネルの寿命や、同様に重要な設備であるパワーコンディショナーの寿命、投資対象としての設備そのものの「寿命」といった考え方について解説します。
太陽光パネルの寿命の目安は
一般に太陽光パネルの寿命は20年~30年程度と言われています。
ただし、太陽光パネルの寿命は使用する環境や適切なメンテナンスの有無によっても大きく変わってきます。
実際、負荷の少ない環境下で適切なメンテナンスを実施することで30年以上運用できている設備がある一方で、負荷の高い環境下でメンテナンスも実施しなければ20年未満で寿命を迎えてしまうかもしれません。
参考指標として、各パネルのメーカーが設定している「出力保障(保証期間に既定の出力を下回った場合に、修理・交換を保証)」が挙げられます。
出力保障期間はメーカーによっても異なりますが、20年~25年で設定されていることが多く、この出力保障の期間を便宜上「寿命」とするのも考えやすいかもしれません。
パワーコンディショナーの寿命
太陽光発電においてパネル同様に必須の設備としてパワーコンディショナー(パワコン)が挙げられます。
太陽光パネルは30年以上利用し続けることも可能ですが、パワーコンディショナーの寿命は10年前後です。
そのため、太陽光発電設備を長期にわたって保有・運用する場合、パワーコンディショナーに関しては1回~3回程度の買い替えが必要となることも念頭に入れておきましょう。
「FIT期間」を寿命とする考え方も
太陽光パネルそのものの寿命とは少し異なりますが、「FIT期間」を投資対象としての太陽光設備の寿命とする考え方もあります。
FIT制度は2022年度までに新築し、認定を受けた設備について認定から20年間電力会社からの買い取り価格を国が保証する制度です。
売電価格が固定となるため、収支のシミュレーションが行いやすく、安定した運用を行うのに適しています。
FIT期間終了後(もしくはそもそもFIT認定を受けていない場合)は市場での取引となり、売電価格は需要と供給により決まります。
FIT制度での固定価格よりも高額で取引できる可能性もありますが、価格は安定しません。
そのため、固定価格で売電ができる期間を投資対象としての寿命とする考え方もあります。
太陽光パネルの耐用年数
寿命と混合されがちな概念として「耐用年数」があります。
耐用年数と寿命は必ずしも一致するものではありませんが、メンテナンスや買い替えのタイミングを検討する上での参考指標としては有効です。
太陽光パネルの耐用年数について、考え方や重要な論点を踏まえて解説します。
そもそも耐用年数とは?
耐用年数(法定耐用年数)とは、「資産が税務上価値を持つとされる年数」のことです。
設備などの資産は、購入した時点から時間の経過とともにその価値を徐々に失っていきます。
例えば、耐用年数が「10年」の資産であれば、10年間に間に少しずつ資産価値を減らし、最終的に0(正確には有形資産の場合は1円)になるといった考え方です。
国税庁により、物品・資産ごとに区分され、定められています。例えば、「ノートパソコンは4年」「自動車は6年」といった形です。
ノートパソコンにせよ、自動車にせよ、実際にどの程度の年数で寿命を迎えるかは利用の頻度や環境によって大きく異なります。
そのため、実際の物の寿命と物に定められた耐用年数は必ずしも一致するわけではありません。
太陽光パネルの耐用年数
事業用の太陽光パネルは、「機械・装置以外のその他の設備の主として金属製のもの」に分類され、耐用年数は17年と定められています。
実際には適切に利用していれば、17年以上利用できる可能性が高いですが、税務上は購入から17年で資産価値を失う、と考えられます。
耐用年数は減価償却において重要
耐用年数は寿命の目安としてよりも、税務上、「減価償却」を考える上で重要な概念です。
減価償却とは資産の価値が購入時を100としたとき、耐用年数超過時点で0(正確には現物の場合は1円)になると考えた時、毎年失っていく資産価値の金額を指します。
減価償却は太陽光発電投資の収支において、経費として計上できるため、利益を圧縮もしくは損失を計上する上で非常に重要です。
減価償却の考え方には「定額法」と「定率法」の2つの考え方があります。
定額法
定額法は、購入時から耐用年数経過時まで、毎年一定の金額だけ減価償却していく考え方です。
例えば、太陽光パネルの購入に1,700万円を要した場合、耐用年数が17年間なので、毎年100万円ずつ損失として計上していきます。
定率法
定率法は、耐用年数を迎えた時点で資産価値が0(正確には1円)になるよう一定の「比率」で減価償却させる計算方法です。
太陽光パネルの場合、減少率は開始時は11.8%、償却額が保証額(取得時の資産価値×4.038%)を下回った時点で12.5%で計算されます。
定額法・定率法は選択可能
減価償却において、定額法・定率法いずれを用いるかは選択できます。定額法を選択した場合、毎年一定額を計上することになるため、計算が容易です。
一方で定率法の場合、購入から年数が経っていない時期に大きな金額を減価償却できるため、高い節税効果が期待できます。
双方のメリットを比較し、事業計画上都合の良い方を選択するようにしましょう。
太陽光パネルは劣化したらどうなる?
太陽光パネルは時間の経過とともに劣化を避けることはできません。しかし、太陽光パネルの劣化は放置すると様々な悪影響を及ぼしかねません。
太陽光パネルの劣化がもたらす影響について解説します。
発電効率の低下
太陽光パネルの劣化による最も大きな影響は発電効率の低下です。
紫外線や温度変化、物理的な損傷などにより、パネルが徐々に損傷すると、太陽エネルギーを電力に変換する能力が低下し、同じ量の太陽光から得られる電力が減少します。
発電効率の低下は販売する電力量の減少に直結するため、収支に直接影響する事象です。
見た目の変化
太陽光パネルの劣化に伴い、見た目にも変化が現れることがあります。
例えば、パネル表面の色褪せや黄変などです。
これらの変化は、必ずしも直接性能に影響するわけではありませんが、設置されている環境によってはパネルの発電効率に影響を及ぼす可能性があります。
ホットスポットの形成による損傷の拡大
劣化した太陽光パネルでは、一部のセルが他のセルよりも高い温度になる「ホットスポット」と呼ばれる現象が発生することがあります。この現象は、パネル内の一部が影になることや、内部の欠陥によって引き起こされます。
ホットスポットはパネルのさらなる劣化や劣化の広がりを促進し、最悪の場合は損傷や火災の原因となることもあります。
太陽光パネルの劣化の経年劣化以外の原因
太陽光パネルは時間の経過とともに劣化を避けられませんが、その他の外的な要件によって劣化するケース、劣化が早まるケースも考えられます。
経年劣化以外の、太陽光パネルの劣化要因を見ていきましょう。
外的環境
太陽光パネルは、紫外線、温度変化、強風など、様々な気象条件に晒されます。
特に紫外線による長期間の曝露は、パネルの表面材料を徐々に劣化させ、光の吸収率を下げる原因となります。
また、高温や急激な温度変化は、パネル内の材料が膨張・収縮することで微細な亀裂が生じる可能性があり、電力生成効率の低下につながります。
どのような外的環境が太陽光パネルの劣化を促すかはエリアによっても大きく異なるため、投資対象となる設備の立地選定において非常に重要と言えるでしょう。
物理的な破損
物理的な破損は、太陽光パネルの劣化に直接的な影響を与えます。
例えば、強風によって運ばれてくる砂や小石、落下物、雹(ひょう)などがパネル表面に衝突することで発生する傷や亀裂は、パネルの構造を損ない、結果として性能が低下します。
さらに、これらの物理的損傷は、水分の侵入を許し、内部の電気部品を腐食させる原因にもなり得ます。
汚れ
パネル表面の汚れは、太陽光の吸収を阻害し、太陽光パネルの効率を著しく低下させます。
ほこり、花粉、鳥の糞、葉っぱなどがパネルに蓄積することで、光がパネル内部の光吸収材料に届きにくくなり、発電効率の低下やその他のトラブルを誘発しかねないのです。
このような汚れは、雨などによって自然に洗い流されることもありますが、人為的なメンテナンスによる除去が求められるケースもあります。
太陽光パネルを長く使う方法
太陽光投資の収支を最大化するためには、太陽光パネルを適切に管理することで可能な限り長く使い続けることが重要です。
長期間太陽光パネルを使い続ける方法について、具体的な手法を解説します。
適切な設置
太陽光パネルの長寿命化と効率の維持には、適切な設置も重要です。
例えば、熱によるパネルの劣化を防ぐためには、冷却のために十分な空気流通も確保した上で設置することが奨励されます。
設置においては発電効率を考慮することも重要ですが、パネルの寿命を犠牲にしてしまうと、修理や交換の費用で却って収支が悪化する可能性もあるため、総合的に考慮することが大切です。
定期的なメンテナンス
太陽光パネルの劣化や性能低下を防ぐためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。
例えばパネル表面の汚れやゴミを定期的に清掃し、特に鳥の糞や落ち葉などが蓄積しないようにすることでパネルの劣化の進行を防ぎます。
また、パネルや配線の損傷をチェックし、必要に応じて修理や交換を行うことで、常に最適な状態を保つことも重要と言えるでしょう。
メンテナンスは専門の業者に委託することで、手離れよく運用でき、かつ見落としなく最適なメンテナンスが期待できます。
遠隔での発電量の監視
太陽光発電システムでは、発電量を遠隔で監視することが可能です。
発電量は天候や気温など環境の影響を受けて変動しますが、同様の環境下において発電量が下がっている場合、パネル側に問題がある可能性も考えられます。
特に、特定のパネルの発電量が他のパネルと比較して著しく低い場合、そのパネルが汚れているか、あるいは故障している可能性が高いと言えるでしょう。
遠隔監視システムはパネルをはじめとする設備の不具合を早期に検知する上でも非常に重要です。
コストを抑えて太陽光パネルのメンテナンス・買い替えを行う方法
太陽光パネルを適切に管理し長く使い続けることも重要です。
加えて、突発的な事故などのトラブルにより修理・買い替えを余儀なくされることもあります。
太陽光パネルのメンテナンス・買い替えにあたってコストを抑える方法について解説します。
メーカー・施工業者の保証を活用する
太陽光パネルや関連機器は、製造元や施工業者から一定期間の保証が提供されています。
この保証は、製品の不具合や性能低下が発生した場合に修理や交換をカバーするもので、保障期間を活用することで既定の料金よりも安く修理や買い替えができる可能性もあります。
保証期間や条件は製品や業者によって異なるため、購入時に詳細を確認し、必要な書類は大切に保管しておきましょう。
問題が発生した場合には、速やかにメーカーや施工業者に連絡し、保証サービスの適用を求めることが重要です。
保険を活用する
太陽光発電システムを対象とした保険を活用することも、コストを抑える一つの方法です。
保険には、自然災害や事故による物理的破損だけでなく、盗難などの事象まで幅広いリスクをカバーするものがあります。
また、一部の保険商品には、システムの性能低下による収益損失も保証するオプションが含まれている場合があります。
保険の適用範囲、保険料、自己負担額などの条件を事前によく確認し、自分の状況に合った保険プランを選択することで、突発的なコスト発生や損失を抑えた太陽光設備の運用が可能です。
まとめ
太陽光パネルの寿命は20年~30年程度と言われていますが、実際には利用する環境や適切なメンテナンスの実施によっても変わります。
安定した高い収益を得るためにも、時には保障期間や保険なども活用しながら適切な管理・運用を行うことが大切です。
今回解説した内容を参考に、最適な体制での運用を実施してみてください。管理やメンテナンスに関しては専門の業者に委託するのも、手離れが良く適切な管理ができるため、おすすめです。