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更新日:2024/11/19
太陽光発電のメンテナンスが必要な4つの理由!点検内容や費用も併せて解説
近年、脱炭素化やSDGsなどの環境問題を背景に、太陽光発電を導入する企業が増加しています。
太陽光発電を導入している、または検討している企業の経営者や担当者の方は、このようにお悩みではないでしょうか。
「太陽光発電のメンテナンスは必要なのか」
「メンテナンスの点検内容や費用相場を知りたい」
「太陽光発電のランニングコストを抑える方法とは」
本記事では、太陽光発電のメンテナンスの必要性をはじめ、点検内容や費用相場を解説します。
また、メンテナンス費用を抑えるポイントもご紹介するので、ぜひお役立てください。
Contents
太陽光発電のメンテナンスが必要な4つの理由
太陽光発電のメンテナンスが必要な理由は、主に以下の通りです。
- 発電量の低下を防ぐため
- 事故による損失を防ぐため
- 法律で義務化されているため
- 故障や経年劣化を早期発見するため
それぞれについて、詳しく解説していきます。
発電効率の低下を防ぐため
太陽光発電のメンテナンスが必要な理由の1つ目は、発電効率の低下を防ぐためです。
太陽光発電システムは、パネルや機器の汚れ、劣化、故障などがあると、発電効率が低下することがあります。
定期的なメンテナンスにより、これらの問題を排除することで効率を最大化し、最適な発電性能を維持するのに役立ちます。
事故による損失を防ぐため
太陽光発電のメンテナンスが必要な理由の2つ目は、事故による損失を防ぐためです。
設備のメンテナンスを怠ると故障箇所の発見が遅れるほか、経年劣化が進行しやすくなり、火災や感電事故につながる恐れがあります。
特に火災は自社だけではなく、近隣の施設や住居などの他者に重大な損失を与える可能性もあるでしょう。
会社の損失につながるトラブルを避けるためにも、定期的なメンテナンスを行うことが大切です。
法律で義務化されているため
太陽光発電のメンテナンスが必要な理由の3つ目は、法律でメンテナンスが義務化されているためです。
太陽光発電のメンテナンスは、下図のように「電気事業法」と「改正FIT法」で義務化されています。
太陽光発電(FIT認定) | 50kW未満(改正FIT法) | 50kW以上(改正FIT法/電気事業法) |
太陽光発電(非FIT認定) | 50kW未満(該当せず) | 50kW以上(電気事業法) |
メンテナンスの義務化に該当する太陽光発電が、適切なメンテナンスを行っていない場合、「FIT認定の取り消し」などの罰則が課せられるケースがあります。
参照:改正FIT法
参照:電気事業法
故障や経年劣化を早期発見するため
太陽光発電のメンテナンスが必要な理由の4つ目は、故障や経年劣化を早期発見するためです。
太陽光発電は、設備の法定耐用年数は17年、太陽光パネルの期待寿命が30年以上と長く、経年劣化に強い特徴があります。
しかし、その分トラブルが発見しづらく、太陽光発電は故障を見逃してしまうことも多いと言われています。
メンテナンスを怠ると上記でご紹介した、事故や発電量の低下につながるため、定期的な点検は必ず行いましょう。
太陽光発電のメンテナンス内容と種類
太陽光発電のメンテナンス内容と種類は、主に以下の通りです。
- 目視による点検
- 測定機器による点検
- 遠隔監視による点検
- 清掃・除草などの定期点検
それぞれについて、詳しく解説していきます。
目視による点検
目視点検とは、太陽光発電システムを目視で確認する点検です。
- 太陽光パネル(モジュール)表面の汚れや破損の確認
- 太陽光発電システム周辺の環境確認(草木による影)
- 接続箱やケーブルの接続状態の確認
- パワーコンディショナーの状態確認
目視点検の詳しい内容は、日本電気工業会が公表している「保守点検ガイドライン」の「一般的なサイト目視検査」をご確認ください。
参照:保守点検ガイドライン
測定機器による点検
測定機器による点検とは、太陽光発電システムを精密機器で調べる点検です。
- サーモグラフィーによる温度確認(IR測定)
- I-Vカーブ特性測定診断
- セルラインチェック
- 接地抵抗検査
上記の精密機器による点検で、目視ではわからない異常を発見することができます。
測定機器による点検の詳しい内容は、日本電気工業会が公表している「保守点検ガイドライン」の「機器類検査及び安全に係わる保守」をご確認ください。
参照:保守点検ガイドライン
遠隔監視による点検
遠隔監視による点検とは、太陽光発電に導入した遠隔監視システムで点検する方法です。
遠隔監視システムを導入すると、太陽光発電の稼働状況を日々確認することができるため、トラブルを発見しやすくなります。
遠隔監視システムは自社で管理することもできますが、トラブルを見逃す、問題へ対処できないなど、適切な対応が難しい場合があります。
専門知識を持つスタッフがいない場合は、業者の遠隔監視サポートを活用することも検討してみましょう。
清掃・除草などの定期点検
清掃・除草などの定期点検とは、太陽光発電の設備や周辺の環境を確認し、状況に合わせて対応する点検方法です。
メンテナンスが必要な理由でもご紹介した通り、太陽光パネルやパワーコンディショナーの汚れは、発電量に大きな影響を及ぼします。
また、設備周辺の雑草が生い茂ると発電量の低下をはじめ、目視による点検や測定機器による点検の妨げになることがあります。
草刈りなど周辺の環境整備を自社で行う際は、設備やケーブルを誤って破損させないよう十分に注意しましょう。
太陽光発電のメンテナンス費用相場
ここからは、太陽光発電のメンテナンスにかかる費用相場についてご紹介していきます。
- 発電規模別のメンテナンス費用相場
- 設備の修理・交換のメンテナンス費用相場
それぞれについて、詳しく解説していきます。
発電規模別のメンテナンス費用相場
太陽光発電のメンテナンスは「O&M(オペレーション&メンテナンス)」と呼ばれています。
O&Mの費用は太陽光発電の設備規模により異なり、それぞれの費用相場は次の通りです。
設備規模 | 費用相場 |
---|---|
住宅用太陽光発電 | 5万円~10万円/1回 |
産業用太陽光発電(低圧) | 10万円~20万円/1年 |
産業用太陽光発電(高圧) | 50万円~200万円/1年 |
はじめに、住宅用太陽光発電は1回のメンテナンスにつき5万円から10万円が費用相場です。
しかし、多階層の住宅などメンテナンスに足場が必要となる場合、足場設置費用が別途必要になります。
つぎに、50kW未満の低圧産業用太陽光発電は、1年間のメンテナンスで10万円から20万円が費用相場です。
メンテナンス内容は各業者によって異なるため、自社の管理体制に合わせたプランを選択しましょう。
最後に、50kW以上の高圧産業用太陽光発電は、1年間のメンテナンスで50万円から200万円が費用相場です。
2,000kW以上の特別高圧になると、最低でも年間100万円のメンテナンス費用がかかります。
ここまで相場の目安をご紹介しましたが、実際は太陽光発電の設備規模や状況により大きく異なるため、詳しく知りたい方は業者に問い合わせを行いましょう。
設備の修理・交換のメンテナンス費用相場
太陽光パネルやパワーコンディショナーなどの設備が破損した場合、メーカー保証期間内であれば無償対応してもらえます。
しかし、保証期間を過ぎた後は有償での対応となり、設備の修理・交換は追加費用が発生します。
設備種類 | 修理・交換の費用相場 | 設備寿命 |
---|---|---|
太陽光パネル(モジュール) | 10万~40万円/1枚 | 30年 |
パワーコンディショナー | 3万~5万円/10m | 10年~15年 |
柵・フェンス | 3万~5万円/10m | 10年~20年 |
このように、保証期間外の修理・交換は決して安くはない費用がかかってしまいます。
繰り返しになりますが、設備の故障や経年劣化を防ぐためには、定期的なメンテナンスを行うことが大切です。
太陽光発電のメンテナンス費用を抑える方法
ここからは、太陽光発電のメンテナンス費用を抑える方法について、詳しくご紹介していきます。
自己点検と清掃
太陽光システムの基本的なメンテナンス作業を学び、定期的な自己点検と清掃行うことで費用を節約できます。
定期的な点検では、パネル上の汚れやほこりを除去し、配線や接続部分の状態を確認します。
また、太陽光パネルの清掃は日常的に行うことで、汚れの蓄積を最小限に抑え、発電効率を最適な状態に保つことができます。
ただし、専門知識を要する点検や高所作業は安全を考慮し、専門業者に依頼することが重要です。
メンテナンス契約の比較
複数のメンテナンス業者や契約内容を比較し、自社に最適な契約に変更することで、費用を節約できます。
契約を見直す際は、必要なメンテナンス項目と頻度を考えて、適切な価格とサービスのバランスを見つけることが重要です。
これにより、メンテナンス費用を抑えながら、適切なメンテナンスも実施することができるようになります。
モニタリングシステムの導入
モニタリングシステムを導入することで、太陽光発電システムの運用状況をリアルタイムで監視できます。
異常や故障などの問題を早期発見し、必要な対処を行うことで、必要最低限のメンテナンス費用に抑えられます。
また、モニタリングシステムを活用して発電データの収集や分析を行うことにより、システムの効率改善やトラブル予防にも役立ちます。
レギュラーメンテナンスの実施
定期的なレギュラーメンテナンスの計画・実施は、太陽光発電システムの安定稼働とトラブル防止に不可欠です。
目視点検や劣化した部品の交換、ケーブル配線や接続部分の確認などを定期的に行うことで、システム全体の信頼性を高められます。
また、メンテナンス頻度を遵守することで、予定外の修理や交換を減らすことができ、結果としてコストを削減することができます。
これらのポイントを考慮することで、太陽光発電システムのメンテナンス費用を効果的に抑えることができます。
ただし、安全性やシステム保守のために、必要なメンテナンスは適切なタイミングで行うことが重要です。
太陽光発電のモデルケース(電気代)
ここからは、太陽光発電システムを導入した場合の電気代について、小規模事業所をモデルにご紹介します。
小規模事業者向けの電灯(低圧/50kWh未満)の電気料金単価は、2023年7月現在で24.89 円/kWhです。(※1)
小規模事業所の年間消費電力量が250,000 kWhの場合は、年間電気代は6,222,500円となります。
設置容量35.0 kWhの太陽光発電システムを導入すると、年間発電量は41,500kWhとなり、年間電気代は1,032,935円節約できます。(※2)
また、産業用太陽光発電(低圧)は年間100,000円ほどのメンテナンス費用が必要になります。
この結果から、太陽光発電システム導入後の電気料金は、表右下にあるように5,289,565円となり、設置前より932,935円節約できます。
項目 | 小規模事業所(設置前) | 小規模事業所(設置後) |
---|---|---|
設置容量 | – | 35kWh |
年間発電量 | – | 41,500kWh |
年間消費電力量 | 250,000kWh | 250,000kWh |
年間発電量 | – | 41,500kWh |
年間電力量料金 | 6,222,500円 | 6,222,500円 |
メンテナンス費用 | 0円 | 100,000円 |
年間コスト(総額) | 6,222,500円 | 5,289,565円 |
参照:新電力ネット(※1)
参照:太陽光発電総合情報(※2)
適切なメンテナンスでランニングコストを抑えよう
本記事では、太陽光発電のメンテナンス方法や費用、ランニングコストを抑える方法などをご紹介しました。
繰り返しになりますが、定期的なメンテナンスは発電量の低下防止や事故による損失防止、さらにランニングコストの削減にも役立ちます。
太陽光発電は耐久性が高く、壊れにくいためメンテナンスを疎かにしてしまいやすいと言われています。
本来かからない費用を発生させないためにも、メンテナンスに関する正しい知識を身に付けておきましょう。