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ポリ塩化ビフェニル(PCB)の処理期限は?期限を過ぎたらどうなる?
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、1972年から生産や輸入が禁止されている油状の化学物質です。
強い毒性があり、生き物の体内に取り込まれやすく残留性が高いため、処理期限が定められています。
ポリ塩化ビフェニル(PCB)の処理期限を過ぎても処分しないと、改善命令の対象となったり、自治体の行政指導に従わない場合は、PCB特別措置法第31条、32条、33条に基づき罰則が課されたりする可能性があるため、すみやかに対応することが大切です。
そこで今回は、「ポリ塩化ビフェニル(PCB)の処理期限」や「処理期限を過ぎた場合や対処法」についてわかりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。
Contents
ポリ塩化ビフェニル(PCB)とは?
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は油状の化学物質で、以下のような特徴があります。
- 化学的に安定しており幅広く使用されていた
- 日本では1972年から生産と輸入が禁止されている
- 1968年のカネミ油症事件の原因となった化学物質
まずは、ポリ塩化ビフェニル(PCB)の特徴について詳しく解説します。
ポリ塩化ビフェニル(PCB)の特徴
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、以下のような特徴があり化学的に安定しています。
- 無色透明
- 電気を通しにくい
- 熱分解しにくい
- 沸点が高く耐熱性がある
- 水に溶けにくい
そのため、ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、ビルや電車、工場などさまざまな用途で利用されてきました。
ポリ塩化ビフェニル(PCB)が利用されていたもの
用途 |
使用されていた場所や製品 | |
可塑剤 (加工しやすくするための添加物) |
難燃用 |
ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂 |
絶縁用 |
絶縁テープ、電線の被覆 |
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その他 |
ニス、アスファルト・ワックスに混合 |
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潤滑油 |
真空ポンプ油、高温用潤滑油、切削油、油圧オイル、極圧添加剤 |
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絶縁油 |
コンデンサー用 |
テレビ・蛍光灯の安定器・電子レンジ等の家電用コンデンサー、蓄電用コンデンサー、直流用コンデンサー、変電所等の電力用コンデンサー、医療用X線装置用コンデンサー |
変圧器用 |
病院・工場・ビル・船舶・鉄道車両等の変圧器 |
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印刷インキ・塗料 感圧複写紙 |
耐食性塗料、耐水性塗料、耐薬品性塗料、難燃性塗料、印刷インキ 電子式複写紙、ノンカーボン紙(溶媒) |
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熱媒体(冷却用、加熱用) |
パネルヒーター、船舶の燃料油余熱集中暖房、食品工業、各種化学工業、合成樹脂工業等の諸工業における冷却と加熱 |
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その他 |
建築用シーリング材、農業の効力延長剤、自動車のシーラント、紙等のコーティング、陶器ガラス器の彩色 |
日本では1972年から生産と輸入が禁止されている
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は脂肪に溶けやすい性質があるため、生物の体内に取り込まれやすくなっています。
残留性が高い化学物質で毒性が明らかになっており、国内において1972年から生産と輸入が禁止されています。
ポリ塩化ビフェニル(PCB)の中毒症状は、以下のとおりです。
- 倦怠感
- 食欲不振
- しびれ
- まぶたの腫れ
- 関節の腫れ
- 口腔粘膜や爪の色素沈着
- 目やに
- 塩素ニキビ
- 爪の変形など
1968年のカネミ油症事件の原因となった化学物質
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、1968年のカネミ油症事件の原因となった化学物質です。
カネミ油症事件とは、脱臭工程の熱媒体で使用されたダイオキシン類や高濃度ポリ塩化ビフェニル(PCB)が、食用の米ぬか油(カネミ油)の製造過程において誤って混入してしまった食中毒事件です。
主に西日本を中心に広域で発生したカネミ油症事件の患者数は、およそ1万3,000人もいます。
ポリ塩化ビフェニル(PCB)の毒性は胎児にまで影響を及ぼすとされ、世界でも注目された事件となっています。
ポリ塩化ビフェニル(PCB)の処理期限
ポリ塩化ビフェニル(PCB)には、処理期限があります。
高濃度PCBの処理期限は地域ごとに異なりますが、既に処理期限を過ぎています。
高濃度PCBの処理期限が既に過ぎた場合の対処法については後述していますので、新たに発見されたり処理委託を行ったりしていないケースがあれば参考にしてください。
低濃度PCBの処理期限は、「2027年3月31日まで」となっているため、期限に間に合うようすみやかに対応しましょう。
なお、ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、残留性有機汚染物質(POPs)に指定されています。
ストックホルム条約により、国際的に協力し使用制限、廃絶、消滅に向けた取り組みが行われている最中です。
ストックホルム条約では、2028年までにPCB廃油、及び電気機器について環境上適正な管理を行うこと、破壊もしくは不可逆的変換方法によりPCBの性状を示さなくなるまで処理することが定められています。
出典:環境省「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」
ポリ塩化ビフェニル(PCB)を処理する手順
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、「高濃度PCB」と「低濃度PCB」に分類されており、濃度によって処理を行うところが異なります。
高濃度PCBの処理を行っているのは、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)です。
低濃度PCBの処理は、都道府県知事等が許可する施設、及び無害化処理認定施設で行っています。
高濃度PCBの処理期限は過ぎているため、低濃度PCBの処理手順について詳しく解説します。
低濃度PCBの処理手順
- 保管基準に従い、処分するまで適正に保管する
- 政令指定都市や都道府県から許可されている収集運搬業者に、収集と無害化処理施設への運搬を委託する
- 政令指定都市や都道府県の長の許可を得た民間の処理業者や、環境大臣の認定を受けた無害化処理認定業者に、低濃度PCBを処理を委託する
ポリ塩化ビフェニル(PCB)の処理期限を過ぎた場合
ポリ塩化ビフェニル(PCB)の処理期限を過ぎても処分しないと、改善命令の対象となります。
高濃度PCBと低濃度PCBの処理期限を過ぎた場合、どのようなことが起こるのか対処法についても詳しく解説します。
高濃度PCBの処理期限を過ぎた場合
高濃度PCBの処理期限は既に過ぎているため、新たに発見されて処分委託を実施していない場合は、法令違反となるため注意しましょう。
なお、高濃度PCBを発見した際は、すみやかに地域の環境事務所、及び自治体に連絡することが大切です。
自治体の行政指導に従わない場合は、PCB特別措置法第31条、32条、33条に基づき罰則が課される可能性があります。
低濃度PCBの処理期限を過ぎた場合
低濃度PCBの処理期限は、「2027年3月31日まで」となっています。
処分期限を過ぎた状態で低濃度PCBを保管している事業者は、自治体の行政指導や届け出を行わなかった場合、PCB特別措置法第31条、32条、33条に基づき罰則が課される可能性があるため、すみやかに対応するようにしましょう。
まとめ
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、強い毒性があり、生き物の体内に取り込まれやすく残留性が高いため、1972年から生産や輸入が禁止されています。
高濃度PCBの処理期限は過ぎているため、新たに発見された場合は、すみやかに地域の環境事務所、及び自治体に連絡しましょう。
低濃度PCBの処理期限は、「2027年3月31日まで」です。
ポリ塩化ビフェニル(PCB)の処理期限を過ぎても処分せず、自治体の行政指導に従わない場合は、PCB特別措置法第31条、32条、33条に基づき罰則が課されたりする可能性があるため、すみやかに対応するようにしましょう。