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エアコン暖房はなぜ電気料金が高い?企業が知るべきコスト削減のポイント
冬の電気代を押し上げる大きな要因がエアコン暖房です。
特にオフィスや店舗など、長時間稼働させる企業では、暖房の電気料金が経費を圧迫するケースも少なくありません。
なぜ暖房時は冷房よりも電気代が高くなるのか?
本記事では、そのメカニズムと原因をわかりやすく解説し、企業が実践できるコスト削減のポイントを紹介します。効率の良い運転や電力管理を行うことで、快適さを維持しながら電気料金を抑える方法を見つけていきましょう。
Contents
エアコン暖房の電気代が高く感じる理由とは?
暖房時は冷房よりも多くの電力を使う仕組み
エアコンは”ヒートポンプ”という仕組みを使い、空気中の熱を移動させることで冷暖房を行っています。
冷房の場合、室内の熱を外に逃がすだけで済みますが、暖房では逆に「外の冷たい空気から熱を取り込む」必要があります。外気温が低いと熱エネルギーを集めるためにコンプレッサーがより多く稼働し、結果として電力使用量が増加します。
そのため、同じ時間運転していても暖房のほうが電気料金が高くなるのです。特に外気温が5℃を下回ると効率が急激に落ち、企業では使用時間が長いほどコストに直結します。
詳しくは、【エアコン】冷房より暖房の電気代が高い理由は温度差にあり【節電方法や効率よく使う方法もご紹介】の記事で解説しています。
外気温が低いと効率が下がる「ヒートポンプ」の特性
エアコン暖房の性能を示す指標に「COP(成績係数)」があります。これは電力1kWあたり何kWの熱を発生できるかを示す値で、一般的に外気温が高いほどCOPは高く、低温になるほど下がります。
つまり、寒冷地や冬の朝晩など気温の低い時間帯では、エアコンが十分な暖房効果を得るためにより多くの電力を消費します。
また、霜取り運転(デフロスト)によって一時的に暖房が停止することもあり、その間に再稼働するとさらなる電力消費につながります。
このような物理的な仕組みが、暖房時の電気代を押し上げる大きな要因です。
暖房の電気料金が上がる原因は使い方にもある
設定温度と風量のバランスがコストを左右する
暖房時に設定温度を1℃上げるだけで、消費電力は約10%増加すると言われています。特にオフィスなどでは「寒いから」と設定温度を上げすぎる傾向があり、結果的に電気料金がかさむ要因になります。
また、風量を「自動」に設定せずに「弱」に固定してしまうと、部屋全体が暖まりにくく、エアコンが長時間稼働するため、かえって非効率です。
効率よく暖めるためには、最初に強風で室内を一気に暖め、その後に自動運転へ切り替えるのが理想です。温度・風量のバランスを見直すだけでも、電気料金を5〜15%程度削減できる可能性があります。
フィルター汚れやメンテナンス不足が電力ロスを生む
企業では複数のエアコンを長期間使用しているため、フィルターや熱交換器の汚れが蓄積しやすくなります。汚れがたまると風量が低下し、熱交換効率が悪化して電力ロスが発生します。
ある調査では、フィルター清掃を3か月怠ると消費電力が最大25%増えるという結果も。特に業務用エアコンでは使用時間が長いため、定期的な清掃と点検が欠かせません。
さらに、室外機周辺に障害物があると放熱が妨げられ、暖房効率が大きく低下します。エアコンの性能を最大限に引き出すには、「清掃・点検・空気の通り道の確保」が基本です。
企業が実践すべきエアコン暖房のコスト削減対策
省エネ運転モードや自動制御システムの活用
最新の業務用エアコンには、温度センサーや人感センサーを搭載し、室内の状況に応じて最適な運転を行う「省エネモード」が備わっています。
また、IoTを活用したエネルギー管理システム(BEMS)を導入すれば、各フロアや時間帯ごとの電力消費を可視化でき、ムダな運転を防止可能です。
さらに、複数台を自動制御してデマンド上昇を防ぐ「ピークカット制御」を導入する企業も増えています。初期投資は必要ですが、月々の電気料金削減効果は大きく、結果的に1~2年で投資回収できるケースも多く見られます。
▼空調の自動制御とピークカットで電気料金を削減”EM CLOUD”
建物の断熱・気密性能を見直すことで効率を最大化
エアコン暖房の効率は、室内環境の断熱・気密性能にも大きく左右されます。
例えば、古いオフィスビルでは窓やドアの隙間から熱が逃げやすく、暖房効率が30%以上低下することもあります。窓ガラスに断熱フィルムを貼る、サッシを二重窓にする、床や天井に断熱材を追加するなどの対策を行えば、同じ温度設定でも電気料金を大幅に抑えられます。
また、カーテンやブラインドを活用して熱損失を防ぐことも有効です。建物全体での「熱の逃げ道」を減らすことが、結果的にエアコン暖房の省エネにつながります。
電気料金プランやピークカットの工夫も重要
時間帯別料金の見直しとデマンド管理で経費削減
多くの企業では、電気代の中でも「基本料金(デマンド)」が大きな割合を占めます。これは最大需要電力によって決まるため、冬場のピーク時間帯(朝9時~11時、夕方5時~7時)にエアコンを集中稼働させると、年間の電気料金が高騰します。
対策として、エアコンの稼働を分散する、時間帯別料金プランを活用する、ピーク時に一部エアコンを自動停止させるシステムを導入するなどが有効です。
電力会社やESCO事業者と連携し、企業規模に合った電力プランを見直すことで、年間で数十万円規模のコスト削減も実現できます。
複数台エアコンの運用最適化で電気代を削減する
企業や店舗では、複数台のエアコンを同時に稼働させるケースが多く、全台が一斉に最大出力で動くと電気代が急増します。特に業務用エアコンは出力が大きく、複数の室内機を制御する「マルチタイプ」が一般的なため、運転のバランスが非常に重要です。
効果的な方法としては、まずゾーニング運用を導入し、使用頻度の高いエリアのみを優先的に暖めることが挙げられます。例えば、来客スペースや執務室とバックヤードを分けて運転することで、不要な暖房をカットできます。
さらに、温度センサー連動システムを活用すれば、人の在室状況に応じて自動でオン・オフが切り替わり、ムダな稼働を防げます。
また、全エアコンを一括管理できる**中央制御システム(BMS)**の導入も有効です。設定温度のばらつきを防ぎ、ピーク電力を抑制することで、電気代を10〜20%削減できるケースもあります。
複数台運用の最適化は、設備投資を抑えながら大きな省エネ効果を得られる現実的な施策です。
補助金・助成金を活用して省エネ設備を導入する
エアコン暖房の効率化には、省エネ性能の高い最新機種への入れ替えも有効です。しかし、初期費用がネックとなる企業も少なくありません。そこで注目したいのが、国や自治体が実施する省エネ補助金・助成金制度です。
たとえば、経済産業省の「省エネ補助金」や「中小企業等カーボンニュートラル支援事業」では、高効率エアコンやBEMSの導入費用が最大1/2まで補助される場合があります。
また、地方自治体でも独自の助成金を設けており、東京都や大阪府では業務用空調設備更新への補助が充実しています。これらの制度を上手に活用すれば、導入コストを抑えつつ、長期的な電気代削減を実現可能です。
さらに、補助金活用によって環境配慮型の取り組みとして評価され、企業のESG経営やSDGs対応にも寄与します。
省エネは「コスト削減」だけでなく、「企業価値の向上」につながる戦略的な投資です。
補助金制度を活用し、電気代対策と環境対策を同時に進めることで、持続的な経営基盤を築くことができます。

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