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【病院】省エネの重要性と効果的な取組み方法
私たちが健康を守るために頼りにしている病院は、驚くほどのエネルギーを消費しています。
病院が省エネ化することは、環境保護やコスト削減だけでなく、災害時の電力確保や医療品質の向上にも貢献することができます。
これは、私たちが最も必要とする時に医療サービスを受けられることを保証します。
本記事では、病院のエネルギー消費の現状と省エネが必要な理由と背景について解説します。
Contents
病院における節電、省エネが必要な理由や背景
多くのエネルギーや資源を使用する病院は、さまざまな業種の中でも省エネの重要性が高いとされています。
では、具体的にどういった背景で、どういった理由で省エネ活動が必要とされているのでしょうか。
病院のエネルギー消費の現状
病院は24時間365日稼働する施設で、医療機器の使用や照明、空調などにより大量のエネルギーを消費すると一般的に考えられています。
病院が消費するエネルギーには、以下のようなものが挙げられます。
・患者や職員の快適性や安全性を確保するために、空調や換気などの設備を24時間稼働。
特に、手術室や集中治療室などでは、高度な空気清浄度や温湿度管理が求められます。
・レントゲンやMRIなどの医療機器やコンピューターなどの情報機器を多数使用。
これらも大きな電力を消費します。
また、医療機器は故障や停電に対して非常にデリケートであり、常に安定した電力供給が必要です。
・滅菌や洗浄などのために多量の水や蒸気を使用。これらもエネルギーを消費します。
また、水道水や下水道水は医療用水として高い品質が求められるため、浄水や処理にもエネルギーが必要です。
具体的な病院内の各部門のエネルギー消費は以下のようになっています。
- 共有部門 : 34%
- 診療部門 : 26%
- 病棟部門 : 19%
- 厨房部門 : 10%
- 管理部門 : 6%
- 外来部門 : 4%
- 供給部門 : 1%
病棟部門については一般的な事務所ビルに似た特性を持っており、稼働時間も定時型のためエネルギー消費量の比率は小さくなります。
しかし、一般的な建築物の「夏期 28℃、冬期20℃」よりも消費エネルギーが多くなってしまう基準になっています。
これは、病院が患者の快適さと安全性を確保するために一定の温度と湿度を維持する必要があるためです。
次に、比較的エネルギー消費の高い診療部門については、高度な医療機器や設備を使用しており、これらの機器は大量の電力を必要とします。
例えば、MRIスキャナーやCTスキャナーなどの画像診断装置は、一日中稼働している場合があります。
これらの機器は高い精度と信頼性を必要とするため、停電や電力供給の不安定さは許されません。
以上のように、病院は多くのエネルギーを消費する施設であり、そのエネルギー効率を向上させることは重要な課題となっています。
しかし、その一方で、病院は人々の健康と命を守るために不可欠な施設であり、その機能を確保しつつエネルギー効率を向上させることが求められています。
病院で省エネが必要な理由と背景
病院の省エネ化は、以下のような理由と背景から必要とされています。
- 環境保護:
地球温暖化対策として、二酸化炭素排出量を削減することが求められています。日本は、2030年までに2013年比で26%、2050年までに80%の温室効果ガス排出量削減を目指しており、病院もその一翼を担うことが期待されています。 - コスト削減:
エネルギー消費量の削減は、電気代や水道代などの経費の削減につながります。病院は、医療費の抑制や社会保障費の増加などの影響で、経営が厳しくなっています。省エネ化は、病院の収支改善に貢献することができます。 - 災害対応:
日本は、地震や台風などの自然災害が多発する国です。災害時には、電力供給が途絶える可能性があります。病院は、災害時にも医療サービスを提供することが求められています。省エネ化は、電力消費量を抑えることで、自家発電や蓄電池などのバックアップ電源の有効活用につながります。 - 医療品質の向上:
省エネ化は、病院の快適性や安全性を向上させることもできます。例えば、空調や換気設備の改善は、患者や職員の体調や気分に影響します。また、医療機器や情報機器の省エネ化は、故障や停電のリスクを低減し、医療事故の防止に役立ちます。
病院の運営におけるエネルギー問題
病院の省エネ化は、上記のように多くのメリットがありますが、同時に多くの課題もあります。
病院の運営におけるエネルギー問題として、以下のようなものが挙げられます。
- 省エネ対策の導入コスト::
省エネ対策で、空調や換気設備を新しくしたり、医療機器や情報機器を買い替えたりするときは、大きな初期投資が必要です。また、省エネ対策をするために工事やメンテナンスをしたりするときもコストがかかります。病院は、これらのコストを回収できるだけの余裕がない場合が多く、省エネ対策の導入に消極的になることがあります。 - 省エネ対策の効果の測り方::
エ省エネ対策をしたあとは、その効果を正確に測ることが大事です。しかし、病院では、エネルギーの使い方に関係することが多岐にわたります(たとえば、季節や気温、湿度や日射量、患者数や手術件数や医療機器使用時間など)。これらを全部考えて省エネ対策の効果を判断することは困難です。 - 省エネ対策と医療安全性と快適性のバランス:
病院では、医療安全性や快適性を守ることが一番大切です。しかし、省エネ対策をすることで、これらに悪い影響が出るかもしれません。例えば、空調設備の温度設定や換気回数を低くすることで、感染症の予防や患者・職員・来院者の快適さが悪くなる可能性があります。
また、医療機器や情報機器の電源管理や節電モードへの切り替えなども、故障や遅れなどの危険を高める可能性があります。
よって、省エネ対策は、医療安全性や快適性を失わないように注意しながら行う必要があります。
病院で効果的な省エネ方法
省エネ対策の方法は、大きく分けて、エネルギーの使用量を減らす方法と、エネルギーの使用効率を高める方法に分けられます。
使用量を減らす方法としては、電気やガスなどの消費量を抑えるために、照明や空調などの設備を適切に管理したり、節電や節水などの行動を心がけたりすることが挙げられます。
使用効率を高める方法としては、省エネ型の機器や設備を導入したり、再生可能エネルギー(太陽光や風力など)を活用したりすることが挙げられます。
ここでは、病院で効果的な省エネ方法について紹介します。
省エネ設備の導入と改善
病院で省エネを行うためには、まず省エネ設備の導入と改善が必要です。
例えば、以下のような取り組みがあります。
- LED照明や高効率モーターなどの省エネ機器の導入や更新
- 窓やドアの断熱性能の向上やカーテンの使用
- 太陽光発電や蓄電池などの再生可能エネルギーの活用
- エネルギーマネジメントシステム(EMS)やビルディングオートメーションシステム(BAS)などの導入による適切な温度・湿度・換気の管理
これらの取り組みにより、病院の電力消費量やCO2排出量を大幅に削減することができます。
スタッフの省エネ意識向上の取り組み
省エネ設備だけではなく、スタッフの省エネ意識も重要です。
スタッフが省エネに積極的に参加することで、より効果的な省エネが実現できます。
例えば、以下のような取り組みがあります。
- 省エネ教育や啓発活動の実施
- 省エネ目標や実績の公表、評価
- 省エネチームやリーダーの設置や活動
- 省エネに関するアイデアや提案の募集や採用
- 省エネに貢献したスタッフへの表彰や報奨
これらの取り組みにより、スタッフは省エネに対する意識や知識を高めるとともに、自ら主体的に省エネ行動を行うようになります。
省エネによるコスト削減とその効果
病院で省エネを行うことは、コスト削減にも大きく貢献します。
電気やガスなどの使いすぎは、光熱費が高くなるだけでなく、地球温暖化の原因にもなります。省エネ設備や太陽光発電などの再生エネルギーを使うことで、最初はコストがかかるかもしれませんが、長い目で見ればお得です。
省エネで節約したお金は、病院のサービスをより良くするために使えます。
例えば、最新の医療機器を導入したり、スタッフの研修をしたりすることができます。これは、患者さんにとってもメリットがあります。
また、省エネをすることで、病院が環境に配慮しているという印象を与えることができます。
つまり、患者さんや地域の人たちからの信頼や評価を高めることにつながります。
太陽光発電システムの設置と活用
病院で省エネを行うためには、太陽光発電システムの設置と活用が有効です。
太陽光発電システムは、太陽の光を電気に変換する装置です。病院では、屋根や壁面などに太陽光パネルを設置することで、自家発電を行うことができます。
太陽光発電システムのメリットは以下の通りです。
- 環境に優しい:
太陽光発電は、化石燃料を使わず、CO2や有害物質を排出しません。また、騒音や振動もありません。 - 経済的:
太陽光発電は、太陽の光があれば無料で発電できます。また、余剰電力は電力会社に売電することができます。さらに、国や自治体から補助金や減税などの支援を受けることができます。 - 安全・安定:
太陽光発電は、停電や災害などの際にも自立運転が可能です。また、故障やメンテナンスも少なく、長寿命です。
太陽光発電システムを設置する際には、以下の点に注意する必要があります。
- 設置場所や方向:
太陽光パネルは、日当たりの良い場所に設置し、南向きに傾けることが望ましいです。また、影や汚れなどの影響を避けることが重要です。 - 設置規模や容量:
太陽光パネルの設置規模や容量は、病院の電力需要や予算などに応じて決める必要があります。また、電力会社との連系契約や保安対策なども必要です。 - 設置費用や回収期間:
太陽光パネルの設置費用は、パネルの種類や規模などによって異なります。また、回収期間は、売電価格や補助金などによって異なります。設置費用と回収期間を比較して、コストパフォーマンスを考える必要があります。
病院での省エネ成功事例
病院は24時間365日稼働し、患者の生命を守るために必要な医療機器を使用するため、エネルギー消費が非常に高い施設です。
しかし、エネルギー消費の削減は、病院経営の健全性を保つために重要な課題となっています。
ここでは、病院での省エネ成功事例を紹介します。
病院での省エネの取り組み
運用面での取り組み
運用面での省エネに取り組むことで、大きな費用をかけずにコストを削減することが可能です。以下に、運用面で削減効果の高い施策を紹介します。
- 空調設定温度の緩和:設定温度を1℃最適化するだけで約10%の削減が可能です。
- 冷温水発生器の適正台数運転:冷温水発生器の運転台数を見直すことで、省エネ効果が期待できます。
- 省エネルギー体制の構築:組織全体で省エネルギーを意識する体制を作る。
- 排気ファンの停止:不必要な排気ファンの運転を停止することやタイマーによる間欠運転で、エネルギー消費を抑えることが可能です。
- ボイラーの適正台数運転:ボイラーも冷温水発生器と同様に、運転台数を見直すことで省エネ効果が期待できます。
- 照度の適正管理:照明は必要な場所・時間だけ点灯し、無駄な電力消費を抑えることが重要です。
設備面での取り組み
設備導入や見直しによる省エネ効果は、運用改善だけでは得られない大きな削減効果が期待できます。
以下に、設備改善で効果の高い施策を紹介します。
- 高効率冷凍機の導入:最新の冷凍機は省エネ性能が向上しており、旧式の冷凍機と比べて大幅な省エネ効果が期待できます。
- 冷凍機の運転時間短縮:冷凍機の運転時間を最適化することで、無駄な電力消費を抑えることが可能です。
- 高効率空調機の採用:空調機も同様に、最新のものへ更新することで省エネ効果が期待できます。
- ボイラーの効率管理:ボイラーの効率管理も重要な施策です。最新型のものに更新することで、省エネ効果が期待できます。
- 変圧器の台数削減:変圧器の台数を最適化することで、無駄な電力消費を抑えることが可能です。
- 冷温水ポンプの回転数制御:冷温水ポンプの回転数を制御することで、エネルギー消費を抑えることが可能です。
- 高効率照明の採用:照明設備も大きなエネルギー消費源です。高効率の照明を採用することで、省エネ効果を実現できます。
また、BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)の導入も一つの事例です。
脳神経リハビリ北大路病院では、BEMSの導入によって電気使用量および最大デマンド値が減少しました。
その結果、年間で約170万円もの電気料金を削減でき、自治体の補助金も有効活用することでBEMS導入にかかった費用を1年未満で回収できています。
まとめ
病院は、生命を守るために24時間365日稼働する施設であり、エネルギー消費が非常に高いです。
しかし、運用面や設備面での省エネ対策を実施することで、大きな省エネ効果が期待できます。
これらの取り組みは、病院経営の健全性を保つだけでなく、地球環境保護にも貢献します。
エネトクでは、ご相談いただいたお客様にはまず無料の利用電気量の調査診断を行います。
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ご不明点などお気軽にご相談ください。