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キュービクルで起こる事故~原因と対処方法を紹介~
キュービクルは、ビルや工場などの施設で高圧電力を受電し低圧に変換して利用するための重要な設備ですが、正しく設置・運用・保守されていない場合、重大な事故が発生する可能性があります。
この記事では、キュービクルで起こる事故や事故を防ぐためのポイントまで詳しく紹介しています。
ぜひ最後までご覧ください。
Contents
キュービクルで起こる事故
キュービクルで起こる事故の原因と対策について紹介していきます。
感電事故
点検作業中に、作業員が誤って通電状態の部分に触れ、感電して重傷または死亡する事故がありました。
主な原因としては、下記のようなものがあげられます。
- 点検作業前に検電していない
- 作業者が絶縁防護具(手袋・靴など)を使用せずに活線近接作業を実施した
- 誤って活線部分に触れる作業手順ミス
事故を起こさないためには、
- 設備の安全対策は万全に実施されているか
- 作業の管理体制は万全に整備されているか
- 作業前の電源遮断と無電圧状態の確認(検電器を使用)
- 絶縁防護具の着用の徹底
- 作業手順の見直し
が重要です。
事故の原因としては、いずれも基本的な安全対策ができていないことです。
作業をする前には、安全対策を整えてから作業をしましょう。
火災事故
火災事故としては、下記のようなものがあげられます。
機器の短絡・焼損
高圧真空遮断器(VCB)の短絡・焼損が発生し、周辺地域が停電した事故がありました。
塩害地域での塵埃の堆積や湿気による絶縁低下が原因とされています。
事故を防止するためには、定期的な清掃と点検を行い、ほこりがたまらないように掃除することや湿気の影響を防ぐことが重要です。
漏電遮断器の焼損
工場内のキュービクルで、漏電遮断器(ELCB)が焼損し、停電が発生した事故がありました。
原因としては、低圧電路の漏電に対し、ELCB内部の機構が経年劣化により正常に動作せず、加熱・発火したと考えられます。
定期的な機器の点検と、必要に応じた部品の交換を行い、経年劣化による故障を未然に防ぐことが大切です。
小動物の侵入による事故
キュービクル内にネズミやヤモリが侵入し、充電部に接触して短絡・地絡を引き起こし、停電や火災に至った事故がありました。
原因は、キュービクルの構造上の隙間や劣化した部分から小動物が侵入したことです。
予防策としては、キュービクルの隙間や開口部を適切に封鎖し、小動物の侵入を防ぐ対策をすることがおすすめです。
波及事故
波及事故とは、高圧電力を引き込んでいる事業所の電気設備の異常や故障などが原因で、当該設備に限らず、同系列の配電線から受電しているビル、工場、事業所など第三者の電気設備を停電させてしまう事故です。
波及事故の主な原因は下記の4つです。
- 保守不足
- 動物の侵入
- 自然災害
- 故意過失
保守不足
波及事故の原因の多くは、保守不足によるものです。
キュービクルの中には、発電所から送られてくる高電圧の電気を受け入れて、変圧し、各機器に配電するための重要な機器がたくさん収められています。
各機器にはそれぞれ耐用年数や寿命があり、機器に応じて交換やメンテナンスを行わなければいけません。
定期的にメンテナンスをしないと事故に繋がる可能性があります。
キュービクルの保守点検については、キュービクルの保守点検における省エネ!電気料金削減と環境保全の実現をご覧ください。
キュービクルに含まれる機器の更新推奨時期は以下の通りです。
機種 | 更新推奨時期 |
高圧交流負荷開閉器 | 屋内用:15年 又は定格負荷電流閉開回数200回 屋外用:10年 又は定格負荷電流閉開回数200回 |
断路器 | ・手動操作 20年 又は操作回数100回 ・動力操作 20年 又は操作回数1000回 |
避雷器 | 15年 |
高圧交流遮断器 | 20年 又は規定閉開回数 |
計器用変成器 | 15年 |
保護継電器 | 15年 |
高圧限流ヒューズ | 屋内用:15年 屋外用:10年 |
高圧交流電磁接触器 | 15年 |
高圧進相コンデンサ | 15年 |
直列リアクトル,放電コイル | 15年 |
高圧配電用変圧器 | 20年 |
引用:「汎用高圧機器の更新推奨時期に関する調査」 報告書(改訂版)|日本電機工業会
小動物の侵入
波及事故は、小動物(鳥・リス・蛇など)の侵入により、設備が損傷した場合にも起こる可能性があります。
電気設備に小動物が触れたり、侵入しないように通風口や隙間に金網を取り付け、侵入を物理的に防ぎます。
また、定期的にキュービクルの周りは掃除をして、ゴミや食べ物の残骸を排除し、小動物がキュービクルに引き寄せないようにします。
小動物による波及事故は環境整備や定期点検によって防ぐことができるので、事前に対策をするようにしましょう。
自然災害
波及事故は雷や台風などといった自然災害が原因でも起こります。自然災害による波及事故例は下記のようなものがあります。
- 地震による振動でキュービクルが損傷
- 落雷による高圧ケーブルや絶縁体の損傷
- 大雨や洪水によりキュービクル内部へ雨水が侵入してショート
- 台風や強風で外部配線やケーブルが破損
- 大雪によりキュービクルが埋もれている、配線が切断される
自然災害が発生した際には、キュービクルや各機器に異常がないかをすばやく点検し、波及事故を防ぎましょう。
災害の多い地域に関しては、キュービクルを災害リスクの低い場所へ設置するのがおすすめです。
また、自然災害時の緊急対応マニュアルを作成し、訓練を実施することで災害時においても落ち着いて対処することができます。
故意過失
波及事故の原因の中には、工事業者や点検業者などによる故意・過失もあります。
掘削作業や改築工事中を行う際は、電気主任技術者と打ち合わせを行い、電力ケーブルの切断・損傷してしまう事のないようにしましょう。
故意や過失による波及事故は、周辺設備のみならず、作業員自身も巻き込んだ人身事故にもつながる可能性があります。
事故を起こさないために事前計画を遵守しましょう。
キュービクルの事故を防ぐ方法
定期点検と適切な管理を行うことで、事故のリスクを最小限に抑えることができます。
また事故を防ぐだけでなく、保守点検行うことでさまざまなメリットを得ることができます。
ここからが、キュービクルの保守点検不足によっておこる事故と保守点検のメリットについて紹介します。
保守点検不足による事故
保守点検不足によるキュービクルの事故例は下記のとおりです。
- 電気火災:絶縁劣化、接続部の緩み、ホコリや湿気によりショートする
- 感電事故:絶縁不良や保護装置の故障により起こる
- 停電・電力供給障害:過電流、遮断器の動作不良、導体の腐食や断線によって起こる
これらの事故は定期的な保守点検によって防ぐことができます。
キュービクルの安全な運用のために定期的な保守点検をしましょう。
キュービクルの保守点検のメリット
キュービクルの保守点検を行うメリットは、事故を防ぐだけではありません。
設備寿命の延長や運用コストの削減など、さまざまなメリットをもたらします。
また、専門業者による点検を受けることで、より効果的なメンテナンスが可能になります。
効率的な運転を維持し、安定した運用ができるように定期的な保守点検を行いましょう。
まとめ
キュービクルで起こる事故の原因や対策方法について解説しました。
キュービクルで起こる事故は、定期的な保守点検や対策を行うことで防ぐことができます。
事故を起こさないために定期的に保守点検を行いましょう。
保守点検は事故を防ぐだけでなく、設備の異常を初期に発見することやの運用コストの削減にもつながります。
また、事故発生時の緊急対応マニュアルを作成し、事故発生時に慌てることなく対処できるように定期的に訓練を実施しましょう。