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更新日:2024/11/21
キュービクルの保守点検における省エネ!電気料金削減と環境保全の実現
近年、地球温暖化対策やエネルギーコスト削減の観点から企業における省エネへの取り組みが加速しています。
キュービクルは、高圧電力を低圧電力に変換するための変圧器や配電機器などが収められた設備のことを指します。
オフィスビルや工場、商業施設など多くの建物に設置されています。
このキュービクルの適切な保守点検は、省エネに直結する重要なポイントです。
本記事では、キュービクルの保守点検がなぜ省エネに繋がるのか、その具体的な方法やメリットについて詳しく解説します。
Contents
キュービクルの保守点検における省エネ
まずはキュービクルについておさらいです。
キュービクルとは何か
キュービクルとは、高圧受配電設備を金属製の筐体に収納したものです。
変圧器、開閉器、計器類などを一体化することで、省スペース化や安全性の向上を実現しています。
キュービクルについて詳しくは、キュービクル(高圧受電設備)とは?仕組みや導入のメリット、注意点について解説の記事をご覧ください。
キュービクルの役割と重要性
キュービクルは、電力の供給を安定させるために欠かせない設備です。
電力を受け取り、建物内の各設備に適切な電圧で供給する役割を果たしています。
このため、キュービクルの不具合は電力供給に大きな影響を及ぼし、場合によっては停電や機器の故障を引き起こす可能性があります。
キュービクルの保守点検の概要
キュービクルには定期的な保守点検が必要です。
その理由は3つあります。
- 安全性を守るため
- 法律で義務付けられているため
- 設備の長寿命化
順番に解説します。
安全性を守るため
キュービクルは、高圧電流を扱うため定期的に点検して異常がないか確認しないと火災や感電事故の原因になります。
法律で義務付けられているため
日本の法律(電気事業法や労働安全衛生法)では、定期的な点検が義務付けられています。これに違反すると罰則があります。
設備の長寿命化
定期点検をすることで設備の劣化を防ぎ、長く使い続けることができます。結果として修理や交換の費用を減らすことができます。
キュービクルの点検は法令で定められています。
日本では、電気事業法に基づきキュービクルなどの自家用電気工作物に対して保安点検が義務付けられています。
キュービクルの保守点検の内容
キュービクルの保守点検には、以下のような項目があります。
- 外観点検
- 絶縁抵抗測定
- 外観点検
- 温度測定
- 接続部点検
- 設備動作確認
- 接地抵抗測定
順番に解説します。
外観点検
外観点検では、キュービクルの外装に損傷や錆びがないかを確認します。水分が侵入すると内部の絶縁性能が低下し電気事故の原因になります。
絶縁抵抗測定
絶縁抵抗測定は、内部の電線や配電盤の絶縁状態を確認する作業です。
絶縁抵抗が低下すると漏電のリスクが高まり電気事故の原因となります。
また、無駄な電力消費が発生します。絶縁状態を良好に保つことは省エネに直結します。
温度測定
キュービクル内部の各部品の温度を測定することで異常な発熱がないかを確認します。
発熱は、部品の劣化や異常を示すサインです。
適切な温度管理をすることは、機器の長寿命化とエネルギー効率の向上に寄与します。
接続部点検
電線や配線の接続部を点検し、緩みや腐食がないかを確認します。
接続部の不良は、抵抗値が増加しエネルギーロスの原因となります。
定期的に点検し必要に応じて修理や交換を行うことが重要です。
設備動作確認
キュービクル内の各種設備が正常に動作しているかを確認します。
接地抵抗測定
電気を安全に地面に逃がすための接地が正しく機能しているかを確認します。
キュービクルの保守点検の頻度
キュービクルの点検は、以下の頻度で行うのが一般的です。
法定点検
電気事業法により、キュービクルの保安点検が義務化されています。
年次点検は、毎年もしくは3年に1回行われます。
月例点検
月次点検は、毎月もしくは隔月1回行われます。
月次点検では、主に100V、200V回路での漏電の有無、機器の異常な温度上昇の有無、その他異音異臭の有無など通電中でも点検できる項目の点検を行います。
日常点検
日常点検の具体的な内容や頻度については、特に明記されていませんがキュービクルの状態を常に良好に保つために、定期的なチェックが推奨されています。
キュービクルは24時間稼働し続ける設備です。
そのため、定期的な保守点検が不可欠となります。点検を怠ると停電や波及事故、感電や火災などのリスクがあり、人命に危険を及ぼす可能性があるため定期的な保安点検は非常に重要です。
また、故障リスクが増加し結果として無駄なエネルギー消費や大規模なトラブルを引き起こす可能性があります。
保守点検をしないとどうなる?
保守点検を実施しないと以下の3つのリスクが発生します。
事故が増える
点検を怠ると、漏電やショートが起きやすくなり、火災や感電事故のリスクが高まります。
停電する可能性がある
突然の故障で停電すると、工場やオフィスの業務が止まり大きな損失を招きます。
罰則を受ける可能性がある
法律に違反していると罰則が科されることがあります。
また、事故が起きた場合の責任問題も発生します。
キュービクル点検費用
キュービクルの点検費用は、受電設備容量、点検内容、点検業者によって大きく変わります。
以下は、キュービクルの規模別(受電設備容量)の点検費用目安です。
あくまで目安ですので、実際の費用は上記以外にも様々な要素によって変動します。
小規模(100KVA以下)
- 月次点検:9,000円~11,000円程度
- 年次点検:30,000円~40,000円程度
中規模(101KVA~500KVA)
- 月次点検:12,000円~17,000円程度
- 年次点検:40,000円~60,000円程度
大規模(501KVA以上)
- 月次点検:20,000円~28,000円程度
- 年次点検:60,000円~80,000円程度
その他の費用
点検費用以外にも、以下のような費用が発生する場合があります。
- 出張費:遠隔地の場合は、出張費が発生する場合があります。
- 部品代:点検の結果、部品交換が必要になった場合は、部品代がかかります。
- 雑費:書類作成費などその他の雑費が発生する場合があります。
キュービクルの省エネポイント
キュービクルの損失電力は、主に以下の3つによって発生します。
- 鉄損
- 銅損
- 漏れ磁束損
省エネ化には、これらの損失電力を低減することが重要です。
鉄損
鉄損とは電気が鉄を通るときに生じる熱のことを指します。
変圧器や電動機などの磁性材料(主に鉄)のコアに発生するエネルギー損失の一種です。
鉄損は主にヒステリシス損と渦電流損の2つから成ります。
・ヒステリシス損:鉄心を磁化する際に発生するエネルギー損失です。
鉄心の分子磁石の向きが変わる際にエネルギーが消費され、これがヒステリシス損となります。
ヒステリシス損の大きさはヒステリシスループの面積に比例します。
・渦電流損:鉄心に流れる渦電流によって発生するジュール熱による損失です。
鉄心の中に生じる磁束の変化により渦電流が発生し、その結果としてジュール熱が生じます。
銅損
銅損は、変圧器や電動機などの巻線に流れる電流によるジュール熱による損失です。
巻線に流れる電流が大きいほど、また巻線の抵抗が大きいほど銅損は大きくなります。
漏れ磁束損
漏れ磁束損は、変圧器やリアクトルなどのコイルにおいて、一部の磁束がコアを通らずに外部に漏れ出すことにより発生する損失です。
この漏れ磁束は、コイルや配線パターンなどと磁気結合し、誘導電流を生じさせます。
この誘導電流によりジュール熱が発生し、これが漏れ磁束損となります。
これらの損失は、変圧器や電動機の効率を低下させる要因となります。
したがって、これらの損失を最小限に抑えることが、エネルギー効率の向上につながります。
キュービクルにおける省エネ方法
キュービクルは、電力系統における重要な設備であり省エネ対策は、電気料金削減だけでなく環境負荷低減にも貢献します。
ここでは、具体的な省エネ方法を解説します。
無負荷損の低減
- 省エネ型機器への更新
- 使用していない回路の遮断
- ハーモニック対策
これらの対策は、高調波による電力品質の低下を防ぎ、電力システムや電子機器の性能を保つために重要です。
それぞれの対策には特性と適用範囲があり、適切な対策を選択することが求められます。
待機電力の低減
待機電力とは、機器が使用されていない状態でも消費する電力のことを指します。
近年では、待機電力対策が省エネにおいて重要視されており、キュービクルにおいても待機電力を低減することで大きな省エネ効果が期待できます。
待機電力を低減するシステムに電源管理システムがあります。
電源管理システムは、キュービクル内の機器の電源を個別に制御することで、待機電力を低減するシステムです。
時間帯や曜日によって使用状況を分析し、必要に応じて機器の電源をオフにすることで無駄な電力の消費を抑えます。
熱損失の低減
キュービクル内部で発生する熱損失は、電力損失として無駄なエネルギーとなります。
熱損失を低減することでキュービクルの効率を向上させ、省エネ効果が期待できます。
熱損失低減のポイントは以下になります。
自然冷却方式への変更
従来のキュービクルは、冷却ファンで強制的に空気を送風して冷却する方式が一般的でしたが、近年では自然冷却方式を採用したキュービクルも増えています。
自然冷却方式は、冷却ファンを使用しないため消費電力ゼロで冷却することができ、大幅な省エネ効果が期待できます。
冷却ファンの省エネ化
冷却ファンは、キュービクル内部の熱を排出するために不可欠な機器ですが、消費電力も大きいため省エネ化が重要です。
近年では、インバーター制御や省エネモーターを採用した高効率な冷却ファンが開発されています。
放熱ダクトの清掃
放熱ダクトは、キュービクル内部の熱を外部に排出する経路ですが、ホコリや汚れが溜まってしまうと冷却効果が低下し熱損失が増加します。
定期的に放熱ダクトを清掃することで、熱損失を低減することができます。
漏洩電力の低減
キュービクル内部で発生する漏洩電力は、感電事故や火災の原因となるだけでなく電力損失としても無駄なエネルギーとなります。
漏洩電力を低減することで安全性を向上させ、省エネ効果も期待できます。
漏洩電力低減のポイントは以下になります。
絶縁抵抗測定の実施
絶縁抵抗測定は、キュービクルの絶縁状態を定期的に測定することで漏洩電力の発生を未然に防ぐための重要な検査です。
電気事業法に基づいて、定期的に実施することが義務付けられています。
接合部の清掃・緊締
キュービクル内部の接合部は、経年劣化や振動によって緩んだり、汚れが付着したりすることがあります。
接合部の清掃・緊締を行うことで、接触抵抗を低減し、漏洩電力を抑制することができます。
キュービクルにおける省エネ対策は、待機電力低減、熱損失低減、漏洩電力低減の3つのカテゴリに分類して行うことができます。
それぞれの導入目的や予算に合致した方法を選択することが重要です。
省エネ対策を進めることで、電気料金削減だけでなく、環境負荷低減、安全性の向上など様々なメリットを得ることができます。
キュービクルの運用者は、これらのメリットを理解し、積極的に省エネ対策に取り組むことが求められます。
キュービクルにおける省エネ成功事例
キュービクルの省エネは、電気料金の削減だけでなCO2排出量の削減にも貢献します。
近年では、様々な省エネ技術が開発されており導入事例も増えています。
以下に成功事例をご紹介します。
高効率キュービクルの導入
キュービクルは年々進化しており、トップランナー制度の採用により変圧器の省エネ性能が大幅に向上しています。
1999年のJIS規格と比べてエネルギー変換ロスを約50%まで削減することに成功しており、キュービクルの交換は省エネのチャンスとなります。
キュービクルの更新や最新の省エネ技術の導入により、電力消費を大幅に削減することが可能であることを示しています。
エネルギー効率の向上だけでなくCO2排出量の削減にも寄与しています。
省エネルギーと環境保全は密接に関連しており、一石二鳥の効果をもたらすことができます。
まとめ
キュービクルの保守点検は、安全性や法律の遵守だけでなく省エネや環境保護にも重要な役割を果たします。
効率的な運転の維持、異常の早期発見、最新技術の導入によりエネルギーの無駄を減らし環境への負荷を軽減します。
持続可能な社会を実現するために、定期的な保守点検を実施し資源の有効活用と環境保護に貢献していくことが求められます。