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更新日:2024/11/21
業務用エアコンEHPとGHPの違いとは?ランニングコストを抑えるために必要なポイント
最近では、電気代が高騰しているため節電に力を入れる企業も多くなってきています。
節電と考えたときに真っ先に思い浮かぶのが「照明」と「エアコン」だと思います。
照明は、台数がかなり多い場合はランニングコストを抑えることに大きく影響する可能性はありますが、最も効果的なものが「エアコン」です。
一般家庭で使われるルームエアコンと違い、業務用エアコンは容量も大きく機能も優れています。
そのため消費電力も高くなっておりランニングコストが多くかかります。
業務用エアコンにも種類があり、冷暖房機能によって違いがあります。
ガスエンジンを使い消費電力を抑えることの出来る「ガスヒートポンプエアコン(GHP)」と電気のみで駆動することで余分なコストを抑えることが出来る「電気モータヒートポンプエアコン(EHP)」です。
それぞれの違いを理解し、ランニングコストを抑えることの出来る業務エアコンを紹介していきます。
Contents
電気モータヒートポンプ(EHP)とガスヒートポンプ(GHP)の違い
電気モータヒートポンプ(EHP)とガスヒートポンプ(GHP)の違いは「コンプレッサー(圧縮機)の駆動源の違い」です。
電気モータヒートポンプ(EHP)は、電気モーターでコンプレッサーを駆動し、ガスヒートポンプ(GHP)はガスエンジンでコンプレッサーを駆動します。
エネルギー源が違うだけで、コンプレッサーの駆動以外はどちらも電気で駆動しております。
また、ランニングコストや初期設備費用にも差があります。
そのためそれぞれの特徴を理解し、機能とコストを比較することが重要となります。
電気モータヒートポンプエアコン(EHP)とは
EHPとは、「Electric Heat Pump」の略称であり、電気をエネルギー源としてコンプレッサーを駆動しています。
すべて電気で駆動しているため、オイル交換等の費用が掛からない特徴があります。
一般家庭などに多く使われているエアコンは、電気で駆動する「EHP」が一般的になります。
EHPは、電気で駆動しているため電源をONにしても立ち上がりに時間がかかるためすぐに冷房や暖房が効きにくい難点があります。
しかし最近では、省エネの技術が上がってきているため昔に比べ「GHP」と比較しても、メンテナンス費用や定期点検等の維持費の観点から「EHP」にも利点が多くあります。
そのため、最近では業務用エアコンでも「EHP」のタイプのエアコンを使用する企業が増えています。
電気モータヒートポンプエアコン(EHP)の仕組み
EHPは、電気モーターでコンプレッサーを駆動します。
電気モーターによってコンプレッサーが駆動し、冷媒ガスに圧力をかけることで気体の温度を変化させ、冷気や暖気を作り出します。
室外機から吹き出す冷気によって霜が出来るため、定期的に霜取り運転が行われます。
霜取り運転中は、暖房は一時停止をします。
基本的に電気のみで動くため、ガス配管等の工事がなく設置が早く終わることで、工事費用を抑えることが出来ます。
メリット
・電気代のみで良い
⇒GHPはガスと電気の両方がかかるのに対し、EHPは電気のみの料金しかかかりません。
・工事費用がGHPよりも安い
⇒GHPのようなガス管工事がないため、比較的簡単に入れ替えることができ、工事費用を抑えることができます。
・メンテナンス費用がGHPよりかからない
⇒GHPに比べ、メンテナンスや定期点検に費用がほとんどかからないためランニングコストを抑えることが出来ます。
デメリット
・暖房や冷房時、すぐに設定温度の風が出ない
⇒電気モーターのため、電源を入れてから立ち上がりに時間がかかるため設定温度の空気を出すまでに時間がかかります。
・契約電力の基本料金が高くなる
⇒電気のみで駆動しているため、どうしてもGHPに比べ消費電力が多くなります。
しかし最近では、省エネの技術も向上しており、設定温度に達すると自動で風量を調整するなど消費電力を抑える工夫がされています。
・霜取り運転がある
⇒室外機から吹き出す冷気によって、霜が出来ます。
霜を溶かすために暖房運転を一時停止し、霜取り運転を行います。
そのため、その間は空間が冷えてしまいます。
ガスヒートポンプエアコン(GHP)とは
GHPとは、「Gas engine Heat Pump」の略称です。
主に業務用エアコンで使われるタイプが、ガスヒートポンプエアコン(GHP)です。
ガスヒートポンプエアコン(GHP)は、都市ガスやプロパンガス(LPガス)をエネルギー源としてコンプレッサーを駆動しています。
ガスを燃焼させ、発生した熱を利用することで効率的に冷暖することが出来ます。
そのためエネルギー効率がよく、暖房性能に優れているため、すぐに設定温度の空気が出ます。
暖房の立ち上がりが早く、霜取り運転もないため、EHPよりも暖房性能に優れています。
ガスヒートポンプエアコン(GHP)の仕組み
GHPは、ガスエンジン(都市ガスやLPガス)でコンプレッサーを駆動しています。
ガスを使用した「ヒートポンプサイクル」により、高効率な冷暖棒を可能にしています。
ヒートポンプサイクルとは、室内外の空気から暖熱、放熱を繰り返す仕組みのことです。
排熱を利用することで霜取り運転の必要がなく、無駄のない仕組みになっています。
メリット
・消費電力が抑えられる
⇒コンプレッサーをガスエンジンにより駆動することで、EHPに比べ消費電力を90%削減することが出来ます。
・暖房がすぐに立ち上がる
⇒GHPでは、ガスを使用したヒートポンプサイクルにより暖房の立ち上がりが早い特徴があります。
・霜取り運転がない
⇒ガスエンジンから出る排熱を再利用することで霜を溶かすため、霜降り運転をする必要がありません。
・プロパンガスガス(LPガス)は、災害などにも強い
⇒LPガスは、施設内で貯蔵しておくため災害時にガス配管等の破損の心配がないため、災害対策になるといえます。
デメリット
・エンジン音がEHPよりも大きい。
⇒EHPに比べ、エンジンの振動音が大きいため気になる場合があります。
・メンテナンス、点検等の維持費がかかる。
⇒定期的な点検とメンテナンスが必要とされています。
オイル交換やエレメント交換、その他定期点検が必要となりEHPに比べ費用がかかります。
・設置費用等の初期費用が、EHPよりも高い。
⇒ガスを供給するための配管を設けなければならないため、費用がかかる場合があります。
設置費用の比較
EHPとGHPの設置費用についてですが、取り付ける既存の設備によって異なります。
EHPの場合
キュービクルなどの受電設備の容量を上げなければいけないということになると数百万かかる場合があり、さらにエアコンの工事費用がかかってきます。
GHPの場合
排気ガスの都合上設置場所に制約があり、それによって工事費用は変わってきます。
またガス配管工事は、工事費用が高いため設置費用は高くなってしまいます。
EHPとGHPの本体機器の価格を比較すると、GHPのほうが高い傾向にあるため最終的に比較する場合は、お客様の現状の設備等含めてご検討されたほうがいいでしょう。
ランニングコスト比較
EHPとGHPのランニングコスト比較ですが、お客様の使用状況によって異なります。
GHPの場合のランニングコスト
EHPとGHPで消費電力のみを比較した場合、GHPはEHPの1/10ほどの電力で済みます。
しかしGHPには、コンプレッサーを動かすためにガス代がかかってきます。
ガス代に関しても、ガス会社によって異なってきます。
またGHPには、基本的に定期点検などを行うために保守契約料というものがかかってきます。
GHPは、メンテナンスの費用も定期的にかかってきます。
EHPの場合のランニングコスト
GHPと比べ、EHPは電気のみで駆動するためガス代はかかりません。
電気代に関しては、消費電力のピークが基本料となるため夏場のみなど限定的に使用される場合、無駄にランニングコストがかかる可能性があります。
しかし最近では、省エネの技術も向上しているためGHPと比較した際に差はなくなってきています。
またEHPは、GHPに比べメンテナンスや点検の手間も少なくGHPより費用を抑えることが出来ます。
以上を比較してみるとお客様の使用状況によって大きく費用が変わってくることが分かります。
実際に使用される環境に合わせて選定していきましょう。
現在の主流は?
現在、業務用エアコンでは、電気モータヒートポンプ(EHP)を使用される企業が多くなっています。
その理由は、下記のとおりです。
- ガスヒートポンプ(GHP)のメンテナンス、点検費用が高い。
- 電気モータヒートポンプ(EHP)の省エネ化が進み、ランニングコストの差がなくなった。
- 本体機器がEHPのほうが安い
- GHPの業務用エアコンを同じGHPの業務用エアコンに入れ替えるより、EHPの業務用エアコンに入れ替えるほうが設置費用を抑えられる。
以上、4点が大きな要因と考えられます。
EHPの省エネ化が進んだことで、ほとんどランニングコストの差がなくなり、メンテナンスや点検の手間の少ないEHPを導入するところが増えました。
しかしGHPは、スピーディかつパワフルな暖房機能を持っており、現在も多くのところで使われています。
電気モータヒートポンプエアコン(EHP)とガスヒートポンプエアコン(GHP)の違い
既存の設備、使用頻度、設置個所などの条件によってEHPが良いのか、GHPが良いのか変わってきます。
そこで今までのEHPとGHPの性能や設備条件を考慮し、それぞれの違いをまとめます。
電気モータヒートポンプエアコン(EHP)
エネルギー源を電気のみで駆動しているため、消費電力が高くなりますがそれ以外のメンテナンスや点検の費用はGHPに比べ、比較的安く済みます。
しかし消費電力に関しては、省エネ技術も年々向上しているため改善されてきています。
電気モーターでコンプレッサーを駆動しているため、立ち上がりに時間がかかり設定温度の空気が出るまでに時間がかかります。
また暖房の際は、霜取り運転を定期的に行うため暖房が一時停止する時間があり、その間に空間が冷えてしまう可能性があります。
本体価格に関してはGHPよりも安く、設置費用もGHPよりも抑えられる可能性があります。
しかしEHPの場合、キュービクルなどの受電装置の容量を上げなければいけない可能性があり、費用が数百万からかかってくる可能性があります。
また消費電力の基本料は、最も使用している時期の消費電力が基本料金となるため使用時期にムラがある場合に大きく損をしてしまう可能性もあります。
ガスヒートポンプエアコン(GHP)
エネルギー源をガスにしていることで、消費電力をEHPに比べ90%も抑えることが出来ます。
ガスエンジンでコンプレッサーを駆動しているため、立ち上がりが早く特に暖房機能に優れています。
排熱を利用することで、EHPのような霜取り運転が必要ないという無駄のない仕組みとなっています。
本体価格に関してはEHPよりも高く、設置費用に関してもガス配管工事等があるためEHPよりも高くなってしまいます。
設置後についても定期点検などの保守契約料やメンテナンス費用など手間やお金もかかります。
消費電力を抑えることが出来ても代わりにガスを使用しているため、ガス会社によっては高くなってしまう可能性もあります。
しかし受電設備の電気容量に余裕がない場合は、GHPのほうが初期費用を抑えられる可能性もあるため状況によって初期費用やランニングコストは変わってきます。
まとめ
業務エアコンの電気モータヒートポンプエアコン(EHP)とガスヒートポンプエアコン(GHP)の違いについて解説しました。
それぞれにメリット、デメリットがあり環境ごとに最適なものが変わってきます。
そのためEHPとGHPの特徴をしっかりと理解することで長期的に見て費用を抑えることが出来ます。
最近では、GHPのメンテナンスや点検費用などの手間とコストからEHPのエアコンに取り替える企業も多くいます。
業務用エアコンの省エネ化が進んだことでEHPのデメリットであった消費電力が抑えられるようになったことが原因の一つだと考えられます。
またEHPとGHPの両方を取り入れた「ハイブリッド空調」も出てきており、これからも大きな成長が見込まれます。
業務用エアコンも昔に比べ、省エネ技術も上がっており入れ替えることで大きくランニングコストを削減できます。
また業務用エアコンの部品は、基本的にメーカーでも10年ほどで手放してしまうため、その期間を目安に入れ替えを検討されるといいでしょう。