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衣料品店における省エネの現状は?効果的な対策も含めて解説!
衣料業界に関わる方の中には、衣料品店における省エネの現状が知りたい、どう対策していくべきなのか悩みや疑問がある方もいるのではないでしょうか。
本記事では、衣料品店における省エネの現状や必要な背景、対策方法について解説します。
また、すでに省エネ対策の成功を収めている衣料品店も紹介するため、取り組みを参考にしたい方にもおすすめの記事となっています。
本記事を読み、時代錯誤な衣料品店とならないよう現在の省エネ対策を知り、取り組んでみましょう。
Contents
衣料品店における省エネの現状
国連貿易開発会議によると、2000年から2014年にかけて衣料品の生産量は2倍 に増加しており、その背景にはファストファッションの参入が大きく関係しています。
ファストファッションは手頃な価格でおしゃれを楽しめるため、近年では注目度が上がり今ではなくてはならないトレンドのひとつです。
ファストファッションの参入に伴い、衣料店も増加傾向を示しました。
2020年に新型コロナウイルス感染の影響はあったものの、依然として人気は高く、アパレル業界の経済の一角を担う重要な地位を占めています。
衣料品店に省エネが必要な背景
前述したように、衣料品店に省エネ対策が必要な背景には、ファストファッションの参入が大きく関わってきます。
手頃な価格で購入できるファストファッションは、消費者が購入しやすい反面、頻繁に買い替えるようになりました。
それに伴い、工場では大量の生産と廃棄を繰り返したことで、今では「世界で第2位(2019年現在)の環境汚染産業」と指摘されるほどになってしまいました。
ファストファッションが環境を及ぼしている原因については、以下が挙げられます。
- 毎年930億立方メートルの水を使用
- 1本のジーンズの生産に2,000ガロン(約7,580リットル)の水が必要
- 全世界の廃水量の20%を生み出している
- 毎秒、ごみ収集車1台分に相当する繊維が埋め立てや焼却処分されている
- 衣料品の靴の製造は、全世界の温室効果ガス排出量の8%を占めている
こういった原因から各衣料店舗において、環境に対する取り組みが求められています。
参照元:国連貿易開発会議
衣料品店で効果的な省エネ対策
各衣料店舗で実施できる省エネ対策として、以下が挙げられます。
- 照明
- 空調
- 電力の見える化
どのように対策していくべきか詳しく解説します。
照明
衣料品店での電気消費量を設備ごとの割合で見てみると、照明は空調に次いで全体の約20%を占めています。
割合が大きいため、優先的に省エネ対策に着手すると良いでしょう。
具体的な省エネ対策には、以下の方法があります。
- LEDへの交換
- 人感センサー付き照明への交換
- 照明個数を削減
- 清掃
LEDは他の電球に比べて高価ですが、寿命が長く消費電力も少ないため、長期的に見ると十分に投資回収は可能です。
また「費用をかけずに取り組みたい」という方は、一度照明の清掃をしてみてはいかがでしょうか。
照度が戻り、照明の個数を減らせるかもしれません。
空調
衣料品店では、空調だけで約26%の電気消費割合を占めており、一番大きいです。
裏を返せば照明と合わせて省エネ対策を行うと、割合の約半分は省エネを実施できることになります。
具体的には、以下の方法が省エネ対策に有効的です。
- 運転時間の削減
- 設定温度の調整
- 熱交換器やフィルターの清掃
運転時間の削減が最も効果的ですが、急激な削減は継続に影響が出てしまいます。
そのため、まずは設定温度の見直しや清掃から始めてみましょう。
とくにフィルターは、ほこりや汚れで目詰まりしていると本来の機能が発揮されません。
こまめな清掃が一番ですが、あまりにも汚れがひどい場合はクリーニング業者に依頼してみるのも良いでしょう。
また運転時間の削減はこまめに停止することが一番ですが、手間もかかりそこまで気が回せないかと思います。
そういった場合は、空調制御システムの導入を検討してみるのもひとつです。
電力の見える化
省エネ対策として、電力を数値として見える化することも有効です。
消費電力が把握できていないと、具体的な対策を図れず改善の見込みが立ちません。
そのため電力を見える化し、従業員全体で共有しあえば省エネへの意識が高められます。
具体的な方法として挙げられるのは、電力会社から毎月届く明細書のグラフ化が挙げられますが欠点もあります。
グラフ化に伴い詳細な項目が分からず、どこまで電気使用量を削減すればいいか分からない、集計する時間がないといった難点もみえてくるでしょう。
そういった場合は、より細かいデータが入手できる見える化システムの導入をおすすめします。
▼電力の見える化について知りたい方はこちら
衣料品店で省エネを実施する際の注意点
衣料品店で省エネを実施する際の注意点は4つです。
- 労働安全衛生法を遵守する
- 企業方針やコンセプトを軽視しない
- 顧客に不快感を与えない
- 従業員のやる気を下げない
これらに注意しつつ、快適な経営を実現しましょう。
労働安全衛生法を遵守する
省エネに取り組む際は、バックヤード内の温度や湿度などに注意しましょう。
なぜなら法令が定められており、違反すると最悪の場合、罰則が科せられるからです。
衛生管理については「事務所衛生基準規則」に則って遵守しましょう。
衣料品店において省エネ対策に関わる部分について、以下内容を抜粋します。
“事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十八度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない。
(引用元:事務所衛生基準規則(昭和四十七年労働省令第四十三号)第五条第3項)
このように定められているため、労働安全衛生法を遵守したうえで、省エネ対策を最大限に実施するよう努めましょう。
企業方針やコンセプトを軽視しない
衣料品店おける企業方針やコンセプトに反しない程度に、省エネ対策を心がけましょう。
なぜなら店舗によってコンセプトがバラバラになってしまい、統一性のない企業となってしまうからです。
例えば子ども服の販売といった比較的明るめなコンセプトを打ち出しているにもかかわらず、照明が少ないと薄暗く感じ違和感を覚えてしまいます。
省エネ対策に取り組む気持ちは大事ですが、企業方針やコンセプトに反れてしまっては本末転倒です。
そのため、省エネ対策すべきポイントを見極めながら実践しましょう。
顧客に不快感を与えない
顧客が不快に感じない程度に環境を保つことも、省エネ対策を行ううえで重要です。
不快感を与えてしまうと、顧客離れの原因になってしまうためです。
例えば夏なのに冷房の効きが悪い、冬なのに店内が寒いといった場合、長居せずに購入しないまま店内を出ていってしまうことがありえます。
環境省によると、室内温度は20℃を推奨していますが、店舗の広さや地域によって快適な温度は変わってくるため、従業員の意見や顧客の反応を参考にしながら調節すると良いでしょう。
従業員のやる気を下げない
省エネ対策に取り組むにあたって、従業員のやる気を失くしてしまうような対策はしないように注意しましょう。
離職の原因になり、その影響から悪い噂が流れ就職者が減少することも考えられます。
例えば、日々の電力管理を従業員に任せてしまうと「せっかく衣料店に希望して入ったのにやりたい仕事と違った」といった不満が募り、退職してしまう可能性が挙げられます。
従業員の肉体的精神的負担とならないよう、省エネ対策に取り組みましょう。
衣料品店での省エネ成功事例
では、衣料品店において省エネ対策に成功した企業にはどこがあるのでしょうか。
以下の企業が挙げられます。
- ファーストリテイリング
- AOKI
- 洋服の青山
- しまむら
どの衣料店も今では広く知られるほどの大手企業ですが、成功の裏には厳重な環境管理を徹底しています。
成功事例について詳しく解説しますので、ぜひ参考にして取り組んでみてください。
ファーストリテイリング
ファーストリテイリングが展開するユニクロとジーユーは、ファストファッション業界最大級の規模を誇る衣料店で、国内にとどまらず海外にも店舗をかまえています。
省エネの具体的な取り組みとして、「LEDの設置」や温度を自動調整する「空調オペレーションコントロールシステムの導入」です。
LEDの設置に関しては、ユニクロとジーユー合わせて、約96%以上もの店舗で実施しています。
その結果、電気使用量の約38.7%の削減に成功しました。
こういった功績が認められ国際的な認証プログラム「LEED」の既存建物の運用・保守分野において、ユニクロ8店舗がゴールド認証の取得を収めました。
その他にも使用電力における再生可能エネルギーの割合を、2030年度までに100%にする目標を掲げ、太陽光発電パネルを13店舗に設置しています。
参考:ユニクロ公式サイト
AOKI
衣料店の中でも紳士服に特化したAOKIでは「地球環境に優しさを」というスローガンを掲げ、様々な省エネへの取り組みを実施しています。
AOKIでは省エネ対策として、以下の取り組みを行っています。
- LED採用によるCO2排出削減を推進
- ウール衣料やポリエステル製品の回収によるファッションロスの削減
- ダンボールレスや電子化推進による紙資源の削減
- ポリ袋の有料化やハンガー、梱包方法見直しによるプラスチック原料使用量の削減
- 環境に配慮した制服の導入
中でも着用しなくなったウール衣料を店頭で回収し、リサイクル製品に再生する「AOKI ウール・エコ・サイクル」は、1996年に開始しています。
2003年度では5万着にも満たない数でしたが、2013年度には25万着を超える衣料回収を行っています。
このように積極的なエコへの取り組みが、結果的に省エネへの成功を収めることとなりました。
洋服の青山
紳士服販売を中心に事業展開を広げている洋服の青山では、エネルギー使用量削減に成功しています。
全国的に電気使用量削減に取り組み、2013年度と2022年度を比較すると、約38.8%の減少に成功しています。
具体的な取り組みとしては、衣料店舗だけではなく本社も含めて節電やLEDを導入し、室温設定などを実施しました。
中でも電気代の大部分を占める塔屋看板の照明は、都道府県別に日没時刻を把握し、それを基に点灯設定を行っているという徹底ぶりです。
また2011年度より15年以上経過した空調を最新機種へ大幅改修し、毎年定量的回収を続けています。
ほかにも梱包資材の削減やリサイクルなどさまざまな省エネ対策に努めています。
参考:青山商事公式サイト
しまむら
しまむらは郊外を中心に、全国の都道府県に衣料店を展開しており、衣料品だけではなく寝具やインテリアなどの生活家具も取り扱っています。
しまむらで実施した省エネ対策は、以下のとおりです。
- 廃棄物の削減
- 商品調達における環境配慮
- 気候変動への取り組み
廃棄物の削減では、適正な数量の商品を卸し、余剰在庫の廃棄ゼロを目指して取り組みました。
具体的な取り組みとしては、以下の通りです。
- 過去の実績や次シーズンの売上予測からの仕入れ
- 全店舗の商品動向分析
- 商品の店舗間移動や値下げ
これらを徹底管理し、余剰在庫廃棄ゼロを目指しました。
こういった大規模に環境への取り組みを行える要因には「ESG推進チーム」という環境に特化した組織形成が大きいといえます。
チーム内で毎月行われる打合せや各部門との連携がしまむらの省エネ対策を成功へと導いたといえるでしょう。
まとめ
ファストファッションがアパレル業界を活気づけている一方で「環境汚染産業第2位」という認識が根付いてしまい、省エネ対策への取り組みが急務とされています。
すでに数年前から取り組みを始め、結果が見え始めている衣料店も多数存在します。
このまま現状維持を続けていると「環境に配慮していない衣料店」といったレッテルが貼られる日もそう遠くはないでしょう。
「とはいえ何から始めていいか分からない。」といった企業には見える化や電気使用量の削減といった、まずはできることから省エネ対策を始めてみましょう。