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更新日:2024/11/20
電力の見える化は必要?メリット・デメリット、成功事例を解説
昨今、高圧契約の電気代の値上がりや脱炭素が推し進められてる関係で省エネに取り組む企業が増えてきましたが、電気代の削減や電気の使い方を把握するために電力の見える化はメリットがあると言われています。
電力の見える化とは、自社の電気を把握することです。
電気の料金や使い方を把握することで利用者の節電意識を高め、コスト削減できることで省エネ対策の有効的な取り組みとして大手企業から中小企業まで、多くの企業が電力の見える化を実践し、成功を収めています。
電力の見える化は、どのようなメリット・デメリットがあるのか、成功事例とともに解説します。
電力の見える化とは
電力の見える化とは、電力の消費量を数値として表し見える化することです。電力の見える化によって、電気使用の無駄を省いたり、節電意識を高めたりする効果があります。
電力の見える化といっても、「日にち、時間、設備」ごとに使用状況を把握できるため、見かたによって取り組み方も変わってきます。
電力の見える化の方法やメリットを知ることは大切ですが、なぜ電力の見える化が重要であるのか背景や目的を見ていきましょう。
電力の見える化が進んだ背景
電力の見える化が進んだ背景として、東日本大震災による電力需給の逼迫が挙げられます。
計画停電により、企業も個人の生活においても大きな影響を与え、必要なときに必要な電力を供給してもらえないむずがゆさを感じたはずです。
東日本大震災の経験を経て、電気需要の平準化が見直されるようになりました。
電気需要の平準化とは、時間帯や季節によって電気需要にバラつきが生じるため、その変動を少なくすることです。
エネルギーの効率化や化石燃料の使用の低減など、電力需要量を減らす取り組みが進められてきましたが、電力はピーク時に合わせて供給されるため、「時間や季節ごと」に効率的な運用ができる仕組みが必要となります。
このような状況を解決するために、時間や季節ごとに電気の使用量を正確に把握し、電気の平準化を推進するために始まったのが「電気の見える化」です。
電力の見える化の目的
電力の見える化の目的は、見える化によって、省エネに対する行動を促進させることです。
見える化を行う工程においては、省エネ効果はありませんが、時間帯・季節ごと・設備ごとの電気使用量を把握することで、省エネ対策がやりやすくなります。
また、可視化することによって今まで気が付かなかったこともグラフやデータから発見することができます。
省エネルギーセンターで提供している省エネナビ(電力を見える化させる機器)を、住宅やビルで実施した結果、平均で前年度の20%の省エネ効果が確認されています。
電力の見える化の重要性
電気消費量の数値を具体的に把握することは重要です。
具体的な数値がわからないと、課題に対してどう改善策を検討すればいいのかわかりません。
課題の改善策を検討するためにも、電力の見える化が重要になります。
例えば、施設で使用している電気代が大幅に上がったとします。
直近で導入した機械が原因なのか、場所によってどれだけ使っているのか、季節的な問題なのか、といった推測をすることは可能です。
しかし、検討違いで可能性もあるので、電気のプロに相談しましょう。
電気代が大幅に上がってしまった原因を追究するためには、「いつ」「どこで」「何が」という3つのキーワードの把握が必要です。
例えば、次のようなものです。
- いつ:先日の23時から5時に
- どこで:店舗の座敷で
- 何が:空調の電気使用量が
電力の見える化によって、「いつ」「どこで」「何が」を把握しやすくなることによって、改善策を見つけることができます。
今回の例で言えば、「先日の23時から5時にスタッフが空調を消し忘れて電気代が上がった」という仮説が判断できたので、空調停止タイマーや空調自動制御のシステムを導入し、消し忘れを防止するといった改善策につなげることが可能です。
電力の見える化をする3つの方法
次は電力の見える化の方法を紹介します。
明細書の数値をグラフ化する
1つ目の方法は、電力会社から届く明細書の数値グラフ化することです。
明細表を見れば、今月の電気使用量が確認できるため、グラフ化することで月ごとの比較をすることができます。
この方法はヒトが行うため、新たな機器を導入することがなく、コストを抑えられるのがメリットです。
しかし、月単位でしか情報を把握することができず、時間別や設備別など詳細がわからないのがデメリットです。
最も手軽な方法ですが、省エネ効果としてはあまり期待できないでしょう。
きちんと見える化の効果を得たい場合は、新たなシステムを導入することがおすすめです。
見える化システムを導入する
電力の見える化システムを導入することで、電力の見える化が可能となります。
見える化システムは以下のようなものがあります。
デマンド監視装置
電力の使用状況を24時間監視することができ、時間や期間単位で使用状況を確認することが可能です。
最大使用電力を設定しておけば、設定した消費電量が超えそうになるとメールや警告などで通知がくるため、電力消費を抑制できます。
デマンドコントローラー
電力の使用状況を監視できることに加え、自動で電気機器を制御することができます。デマンド装置と違い、人力ではなく自動で制御して削減ができるため、工場や商業施設に向いています。
エネルギーマネジメントシステム
電力に加えて、水道・ガスなど各種エネルギーの見える化が可能です。IoTを活用して計測し、無駄なエネルギーは使用しないよう自動的に監視・制御することが可能です。
エネルギーマネジメントシステムについては下記記事で詳しく説明しています。
スマートメーター・BEMSを利用する
スマートメーターやBEMSを利用し、電力を見える化することも可能です。
スマートメーターとBEMSを連動させることにより、電気・ガス・水温などさまざまな計測データを収集し、グラフ化することができます。時間・季節・設備ごとの使用状況を確認でき、電気設備の自動制御も行えるため、省エネ効果が高いです。
電力の見える化のメリット
電力の見える化を行うと以下のメリットがあります。
- 電力の無駄遣いを減らせる
- 料金プランを再検討する材料になる
- 省エネへの意識が変わる
順番に解説します。
電力の無駄遣いを減らせる
電力の見える化によって、いつ、どの設備が、どのくらい電力を消費しているか確認することができます。
これにより、必要のない消費電力を抑えることが可能です。
例えば、電気使用量の多い機器を把握し、消費電力の少ない機器にシフトしたり、機器の使い方をずらすなどの変更を行うことで必要のない電気を減らすことができます。
また、営業時間外の無駄な消費電力も把握できるので、対策を練ることも可能です。
本当に必要な電力を、必要な時間帯だけ使うことができるので、電力の無駄遣いを減らすことできるのがメリットです。
電気の料金プランを再検討する材料になる
時間帯や季節ごとに電気使用量を把握することができるので、電気の料金プランが現状とマッチしているのか再検討する材料になります。
電力会社によっては、夜間に電気料金が安くなるプランや、早朝に電気料金が安くなるプランなどさまざまなプランがあります。
電力の見える化によって、例えば夜間の電力消費量が多いと分かれば、料金プランを見直すことができ、電気料金を節約できるのがメリットです。
省エネへの意識が変わる
電力の見える化は、PCやスマホからデータが見ることができます。
グラフなどでわかりやすく表示され、常に省エネに取り組んだ結果を見ることができるため、省エネに取り組む意識は芽生えます。
また、消費電力の多い機器から少ない機器へ変えることは、企業だけで行えますが、こまめな節電などはスタッフの力が必要です。そのため、省エネへの取り組みは一人で行うものではなく、会社全体・全従業員が意識して行うことが大切です。
電力の見える化によって従業員も、現在の電力の様子を見える化できます。口頭で伝えるよりも、見える化して把握することで頭に入りやすく、省エネ意識も高くなります。
電力の見える化のデメリット
次に電力の見える化のデメリットは下記です。
- システムを導入すると初期費用がかかる
- 現場の柔軟性を損なう恐れがある
順番に解説します。
システムを導入すると初期費用がかかる
新たに見える化システムや電力計測器などを導入する場合、初期費用がかかってしまうことがデメリットです。
もちろん、電力会社から届く明細書の数値グラフ化することや、簡易電力計であればコストを抑えることができますが、省エネ効果は低いです。
新たに見える化システムや電力計測器を導入すると初期費用がかかりますが、長期的な目線で見れば、省エネ効果によって節電できるためコストを抑えることができます。
最近では初期費用がかからず見える化を導入できるシステムもあるので、初期導入費用がかからないシステムを選ぶようにしましょう。
現場の柔軟性を損なう恐れがある
見える化の導入目的や詳細をスタッフに説明せず、体制だけ整えてしまうと「監視されている」といった意識が生まれてしまい柔軟性を損なう恐れがあります。
電力の見える化を導入するにあたり、新しいルールが生まれることが多いです。
もちろん改善のためのルールは大切ですが、厳格すぎるルールを設定してしまうと、業務改善するために「柔軟性」や「思考力」が失われる可能性もあるので注意しましょう。
電力の見える化の成功事例
実際に電力の見える化を導入し成功した事例を見ていきましょう。
ヤマハ発動機株式会社の事例
ヤマハ発動機株式会社は、浜北工場の二輪車用クランクシャフト加工ラインにおいて、「IoT見える化システム」を導入しました。見える化により、各設備のエネルギー使用量を秒単位で計測し、設備の稼働周期や設備間のエネルギー使用量の関係性を明らかにしました。
見える化によって得た効果は、従来に比べ32%の省エネを実現できたことです。またそれと同時に、「2022年度省エネ大賞」省エネ事例部門の「省エネルギーセンター会長賞」も受賞しました。
株式会社タナチョーの事例
株式会社タナチョーは、大手ガラスメーカーの代理店として活動している会社です。
働き方改革の一環として、残業時間の削減を目標に電力の見える化を導入しました。
電力の見える化として導入したのは、「プラグワイズ」という照明コントロール機能です。
プラグワイズは、照明を一斉消灯することができ、パソコンを使って消灯時間を設定することができます。
一斉消灯を設定後は、残業している従業員の数を半数まで減らすことに成功しました。
また、事務所の照明をつけたまま帰ってしまう「消し忘れ」にも効果的です。
電力の見える化の事例一覧
上記の2会社以外にも多くの企業で電力の見える化が導入されているので、事例を簡単にまとめてみました。
<事例1>
企業名 | 国家公務員共済組合連合会 大手前病院 |
実施した対策 | 空調システムの改善と夜間照明やエレベータなどの見直し |
対策した結果 | 導入初年度は約16%、2年目は約9%のエネルギーを削減 |
<事例2>
企業名 | DIC株式会社 鹿島工場 |
実施した対策 | EMSの導入により各現場の使用電力の確認 |
対策した結果 | 同期間対比で、電力使用量を約7%~27%削減 |
<事例3>
企業名 | 日本トーカンパッケージ株式会社 厚木工場 |
実施した対策 | 新たな管理システムを導入し、電力消費の結果だけでなく需要予測も可能に |
対策した結果 | 政府が設定した電力削減義務を達成 |
まとめ
電力の見える化は、省エネ対策にとって重要な取り組みのひとつです。
電力の見える化によってスタッフ全体が省エネに対する意識を高めることができ、会社が一丸となって取り組むことができます。
今回ご紹介した電力の見える化は節電したい企業にとって大事なものです。
まずは自社の電気を把握し、無駄な電気を削減する努力をしていきましょう。