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省エネNEWS

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更新日:2024/11/21

なぜホテル経営者は省エネに積極的に取り組んだほうがよいのか 

なぜホテル経営者は省エネに積極的に取り組んだほうがよいのか

エネトク編集部

エネトクは全国15,000件以上の法人様に省エネ・コスト削減の支援実績があります。あらゆる業種に対応できる専門性高いコンサルタントがエネルギーコストにまつわる様々なお悩みに合わせて、省エネのフルサポートをおこなっています。

ホテルの経営者に省エネへの取り組みが求められている理由は3つあります。

1つ目の理由は、温室効果ガスを排出している事業者として取り組まなければならないからです。

2つ目の理由は、ホテル経営にプラスになるからです。

3つ目の理由は、省エネに取り組まない理由がないことです。 

地球と環境を守る取り組みであるカーボンニュートラルは、ホテル業界にも求められています。

そして省エネはホテルのエネルギー・コストをダイレクトに削減するので、利益を押し上げる効果を期待できます。

しかもホテルが省エネに取り組むと「環境に配慮した宿」というブランドを構築できます。 

この記事では、ホテルの経営者が積極的に省エネに取り組んだほうがよい理由と、どのように省エネ施策を進めていけばよいのか解説します。 

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ホテルでさらなる省エネが必要な理由や背景 

ホテルの経営者に「省エネに取り組んでください」と言うと、多くは「もうすでにできることはやっている」と答えるのではないでしょうか。

省エネにまったく取り組んでいないホテルのほうが珍しいと思われますが、しかし今は、ギアをもう一段上げた省エネに取り組むときです。 

ホテルでさらなる省エネが必要になる理由と背景を紹介します。 

カーボンニュートラルとは 

ホテルが取り組むべき省エネ施策は、カーボンニュートラルに深く関わっています。

つまりホテルも経済活動を営む事業者として当然にカーボンニュートラルに取り組まなければならないで、省エネを今以上進めなければならない、と言い換えることができます。 

カーボンニュートラルは、CO2などの温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする取り組みで、政府は2050年までの達成を目指しています。 

カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量から、植林や森林管理などによる吸収量を差し引いたものをゼロにする手法であり、したがって温室効果ガスの排出を完全にゼロにするわけではありません。

しかし排出量が少なくなればカーボンニュートラルを達成しやすくなるので、省エネが排出量減に貢献します。

2050 年カーボンニュートラルに向けた日本ホテル協会のビジョン 

ホテルにさらなる省エネが求められている背景は、ホテル業界がカーボンニュートラルに力を入れていることもあります。

業界が環境問題に取り組もうと声をあげているのに、個々のホテルがこれを無視するわけにはいかないでしょう。 

日本ホテル協会はカーボンニュートラル行動計画を策定し、2030年度のホテルにおけるエネルギー消費原単位を2010年度比で15%削減する目標を打ち立てました。

具体的な取り組み内容は以下のとおりです。 

日本ホテル協会はエネルギー消費原単位以外にも、生活活動量や電力消費量、CO2排出量といった指標を削減の対象にしています。

複数の指標を使い、多角的にカーボンニュートラルの達成度を測定しようとしています。 

こうした取り組みはすでに効果が出始めていて、エネルギー消費原単位は2010年度を1としたときに2021年度に0.822まで減っています。

C02の排出量は、2010年度の53.8万トンから2021年には44.8万トンへと16.7%減に成功しています。 

参照:2050 年カーボンニュートラルに向けた日本ホテル協会のビジョン」(経団連)

国は省エネの成果を出しているホテルを称えている 

国(資源エネルギー庁)は省エネの取り組みで成果を出しているホテルを省エネ優良事業者に認定し、これを公表しています。

省エネ指標(ベンチマーク指標)制度の一環で、この制度はホテル業界だけでなく製鉄業界、電力供給業界、セメント製造業界、百貨店業界などあらゆる業界を対象としています。

国としては業界内で省エネ競争を促す狙いがあります。 

ホテル業界のベンチマーク指標には、宿泊面積、食堂面積、収容人数、従業員数などのエネルギー使用量が使われています。 

そして資源エネルギー庁は2021年のベンチマーク指標達成事業者(≒省エネ優良事業者)として次のホテルを選び公表しました。

これらのホテル(事業者)は、国によって省エネの成果を出していると認定されたわけです。

このことは環境意識が高い客に選ばれるきっかけになるので「環境に優しいホテル」というブランドづくりに役立つでしょう。 

参照:「ホテル業のベンチマーク制度」(資源エネルギー庁) 

ホテルのエネルギー消費と電気代  

ホテルが省エネに取り組むときに課題になるのが、何から始めたらよいのか、ということではないでしょうか。

省エネ施策では、とにかくエネルギーと名のつくものはすべて減らす、といった大雑把な方法は大きな効果が期待できません。

また、それぞれのホテルは、いくら省エネを求められてもこの場所のエネルギーを減らすことはできない、というものがあるはずです。 

したがって省エネに取り組むホテルは、効率的にエネルギーを減らせる場所を探したり、使用エネルギーを減らしても経営にダメージを与えない省エネ活動をみつけたりする必要があります。 

ホテルのエネルギー消費の実態を紹介します。 

参照:「ホテル・旅館~あなたの業種のエネルギー消費の特性は」(環境省) 

 

1位給湯、2位空調、客より従業員が使っている 

ホテルのエネルギー消費が大きい領域は順に以下のとおりです。 

ホテルはどこにエネルギーを使っているのか 

1位:給湯用(31%) 

2位:空調動力用(25%) 

3位:冷暖房用(21%) 

4位:照明・コンセント用(14%) 

5位:その他 

最もエネルギー消費が大きい領域が給湯用であることは意外に感じるかもしれません。

大浴場があるホテルなら給湯用のエネルギーが増えることは理解できますが、上記の値は平均値なので大浴場を持たないホテルも多数含まれます。 

実はホテルのエネルギー消費量は、客の利用用より、従業員の清掃時用のほうがはるかに大きい傾向があるのです。 

以上の結果から、ホテルが省エネ施策で早く成果を出すには、まずは給湯と空調に着目する必要があることがわかります。

温めすぎていないか、あるいは冷やしすぎていないか見直しましょう。 

さらに、ホテル側が客に「省エネしてください」と頼むより、従業員たちが普段の仕事のなかで省エネに気遣ったほうが、より大きな効果を生み出すこともわかります。

客に過度な負担や不便を強いる必要がないので、ホテルとしても取り組みやすいのではないでしょうか。 

10万平方メートルのホテルで電気代年2億円なら合格? 

環境省によると、省エネに積極的に取り組んでいる、延べ床面積10万平方メートルのホテルの場合、1年間の電気代は2億円程度とされています。 

つまり100万平方メートルのホテルの年間の電気代が2億円以内に収まっているのであれば「きちんと省エネしている」といえそうです。

この金額は、省エネ施策の効果を測定するときに一つに目安になるでしょう。 

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ホテルで効果的な省エネ方法 

ホテルが実施できる省エネへの取り組みはたくさんあります。ここでは以下の7つの方法を紹介します。 

太陽光発電の活用 

リゾートホテルはリゾートに立地していて、リゾート地は天候に恵まれている場所にあることが多いので、太陽光発電に向いているといえます。 

沖縄県宮古島のあるホテルは12のコテージを12の客室にしていて、そのすべての屋根に太陽光パネルを設置しています。

蓄電池を置いたことで、太陽光発電による電気だけで全室の電力を100%まかなっています。 

さらにこのホテルは電気自動車(EV)のレンタルサービスも行っていて、EVを置く駐車場の屋根にも太陽光パネルを設置しました。

ガソリン車をレンタルすると、客はガソリンを満タンにして返却しなければなりませんが、このホテルのレンタルEVでは、客は使い終わったらそのまま返却するだけで済みます。

駐車場の屋根の太陽光パネルでつくった電気で充電できるからです。 

照明をLEDに切り替える 

多くの照明器具を使うホテルは、それらをLEDに切り替えることで省エネを簡単に実現できます。

LEDは消費電力が小さいという意味でも省エネなのですが、蛍光灯より長寿命なので交換コストや交換労力が小さくて済む点でも省エネになります。

ホテルのロビーなどの照明は高い位置についていることが多いので、交換コスト・労力の削減効果は大きいでしょう。 

また、これはあまり知られていないかもしれませんが、LEDは紫外線を発しないので虫を寄せつけにくい性質があります。

蛍光灯は紫外線を発するので虫が寄ってきます。屋外に設置するホテルの看板を照らすライトをLEDに変えれば虫が減るので、客に不快な思いをさせずに済みます。 

エネルギー・マネジメント・システムの導入 

エネルギー・マネジメント・システムとは、ビルや施設の電力需給のバランスを最適化するためのコンピュータ・システムです。 

エネルギー・マネジメント・システムを導入すると、ホテル内のどの部屋、場所、設備でどれくらいの電気が使われているのかがわかります。

▼詳しくは下記記事で解説しています

空調設備の更新 

ホテルを改築、新築、増築するときは最新の空調設備を導入することで、これに使うエネルギー消費量を減らすことができます。 

例えば外気冷房システムは、外気の温度が室内より低い場合に、外気を積極的に室内に取り込む仕組みです。外気は無料なので、冷房コストを減らすことができます。 

全熱交換器は、換気の際に屋外に排出してしまう熱を回収して思料するシステムです。 

空調設備は日進月歩なので、ホテルの経営者が最新情報を入手しておけば、将来の改築、新築、増築のときの備えになります。 

また空調については、ホテルの閑散期に、特定のフロアの客室しか使わないようにすることで、未使用のフロアの空調を止めて節電することができます。 

日射調整フィルムの設置 

日射調整フィルムとは、透明でありながら、光や熱を選択的に透過させる機能を持つフィルムです。

日射調整フィルムをホテルの窓に貼れば、夏場に太陽光が出す熱を遮断することができ、冷房に使う電力を減らすことができます。 

ホテルの客室の窓は日当たりが良い方向に設置されていることが多いので、日射調整フィルムの恩恵を受けやすいといえます。 

自動電圧調整装置の活用 

自動電圧調整装置を導入すると、電気を使う場所ごとに最適な電圧に調整することができます。

これまで過剰に電圧をかけていた場所は、自動電圧調整装置によって電気の供給量が低くなるので省エネになります。 

改築時に屋根、壁、床への断熱材の採用 

ホテルの改築やリフォームでは、ロビーや客室などの見栄えを良くすることを優先するかもしれませんが、このとき断熱材の更新も検討してみてください。 

屋根、壁、床の断熱材の質や量が不十分な場合、エネルギー効率が悪い建物になっている可能性があります。温めにくく冷ましにくいホテルを、温めやすく冷ましやすいホテルに変えていきましょう。 

断熱材にはセルロースファイバーなどの有機質系やグラスウールなどの無機質系といったように種類があるので、適材適所で採用することによって省エネホテルに生まれ変わることができます。

ホテルの改築・リフォームを依頼する工務店は、断熱材や省エネ施策に詳しいかどうかという視点で選んでもよいでしょう。 

先進事例 

省エネなホテルはすでに稼働しています。

先進的な取り組みをしている2つのホテルを紹介します。 

リゾートトラストは全ホテル、全ゴルフ場に太陽光発電を導入 

リゾートトラスト株式会社は2022年に国内すべてのリゾートホテルとゴルフ場に太陽光発電設備を導入する方針を決めました。

同社のホテルとゴルフ場は計37拠点あり、投資額は20億円になる見込みです。

太陽光パネルを設置する場所は、建物の屋上や駐車場の屋根などで、つくった電力は自家消費していきます。新設する会員制リゾート施設の「サンクチュアリコート琵琶湖」では、日中の消費電力の80%を自家発電でまかなう予定です。 

同社は2005年に環境方針を設定し、そのなかで省エネ、省資源、リサイクルを推進し、環境汚染を防止することなどを決めました。

政府のカーボンニュートラル宣言は2020年に出されたので、これより15年も早く省エネに取り組んできたことになります。 

参照:「持続可能な社会の実現に向けて当社グループの国内37拠点に太陽光発電設備の設置方針を決定」(リゾートトラスト) 

古湧園・遥は世界基準の環境対応型ホテル 

愛媛県松山市の株式会社古湧園が運営する「道後温泉ホテル古湧園・遥(以下、ホテル遥)」は、同県初のZEB認証を得たホテルです。 

ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)とは快適な室内環境を維持しながら、建物で消費する一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことです。

ホテル遥は太陽熱温水器を導入したり、建物の断熱性能を高めたりして一次エネルギーを62%削減することに成功しました。 

環境省はホテル遥を先進的な省エネ施策を導入したホテルとして紹介していて、そのなかで同ホテルの「環境配慮への高い意識や積極的な情報発信」を称えています。イメージアップにつながっています。 

参照:「愛媛県初の環境対応型、ホテル古湧園・遥」(環境省)

まとめ

ホテルの経営者で「省エネをしたくない」と思っている人は一人もいないでしょう。

それでも省エネ施策の着手に二の足を踏んでしまうのは、コストが気になるからではないでしょうか。 

省エネ施策には無料のものやコスト安のものもありますが、高い効果をあげようとするとやはりそれなりに費用はかかります。 

しかし省エネ施策コストは、将来的に回収できる確率が高いものです。

太陽光発電システムを導入すれば電気を買う量を減らせますし、断熱材を更新すればこれまでと同じ快適な室内環境を小さなエネルギーでつくれるようになります。 

そして何より「環境に優しいホテル」という評判はホテルのブランド化に貢献し、環境意識が高い客に支持されるでしょう。 

省エネ施策のメリットを考えると、そこにかかる費用は投資とみなすことができるのではないでしょうか。 

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